フィギュア女子、ROCの牙城崩した坂本花織


完成度の高い演技で銅、大技なくても表現力や芸術性で魅了

フィギュア女子、ROCの牙城崩した坂本花織

フィギュアスケート女子で銅メダルを獲得した坂本花織=17日、北京(時事)

 強豪ROC勢3人が上位を独占するとの見方もあったフィギュアスケート女子。日本勢1番手の坂本が、牙城を崩した。高難度ジャンプがなくても躍動感のある演技で、6位だった前回平昌五輪から大きく、価値あるステップアップを遂げた。

 かつては、弾むようなジャンプばかりが目立つ選手だった。坂本は自らを「ガッツ系」と評したことがある。跳躍には高さも幅もあり、6位だった前回平昌五輪の後は、周囲も自分も4回転やトリプルアクセル(3回転半)の習得を望んだ。4回転のトーループに挑んだ試合があり、ループの練習もした。

 最終的に北京五輪シーズンに選んだのは、大技を組み込まず、完成度で勝負するスタイル。「クリーンに降りられないと点数が下がり、リスクが大きい。けがの怖さもある」。昨夏までに安定させられなかったため、きっぱり割り切った。

 一つ一つのジャンプが出来栄えに優れ、滑りに疾走感があふれている。表現力や芸術性を示す5項目の演技構成点の評価が高い。だから、大技がなくても高得点を出せる。深いエッジで体を傾けながら、繊細な演技でジャッジをうならせる。

 フリーは「女性が内に秘める強さ」をテーマにしている。今季序盤は曲の解釈に悩み、使い続けるか迷った。そんなとき、2006年トリノ五輪金メダリストの荒川静香さんに「やってみて駄目なら変えればいい」と背中を押され、自問自答しながら磨いてきた。

 「ガッツ系」のジャンパーだった少女は21歳となり、大人らしい表現力を身に付けた。曲のメッセージをしっかり届けられるようになった。フィギュアスケートの醍醐味(だいごみ)はジャンプだけではない。坂本の演技には、10代のROC勢とは違った魅力が詰まっていた。(時事)