ゲーム業界が開く仮想空間「メタバース」
VR対応のゴーグル型端末が普及、日本企業にも商機
「メタバース」と呼ばれるインターネット上の仮想空間の開発が加速している。SNS最大手の米メタ(旧フェイスブック)などIT大手の参入で脚光を浴びたこの分野を切り開いたのはゲーム業界だ。仮想現実(VR)対応のゴーグル型端末の普及も見込まれ、市場拡大に期待が高まる。人気ゲームを多数出してきた日本企業にも商機となりそうだ。
メタバースは、CG(コンピューターグラフィックス)のアバター(分身)として活動できる仮想空間。2003年に公開された「セカンドライフ」が先駆けで、ゲーム内で土地や衣服を売買できる。一時は月100万人が利用したが、SNSに押される形で成長が頭打ちになった。
およそ20年を経て再び盛り上がりを見せる背景にコロナ禍がある。感染対策で対面が制限され、実在感のある交流への欲求が高まった。
ユーザーが作ったゲームに大人数で参加できる米企業開発の「ロブロックス」が子供を中心に人気を集め、世界での1日の利用者は約4900万人に上った。グッズ販売などでユーザーが上げた収益は計7億ドル(約800億円)を超えるという。
高級ブランドのグッチが展示会を開いたり、スポーツブランドのナイキがスニーカーを販売したりするなど企業の動きも活発化。著名アーティストの音楽ライブの場にもなっており、対戦型ゲーム「フォートナイト」と並び、米国でメタバースの先導役となっている。
よりリアルな仮想世界実現へのカギがVRだ。ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、家庭用ゲーム機「プレイステーション5」向けにゴーグル型VR端末の新商品を計画しており、VR機器市場は今後数年で急拡大が見込まれる。
VRゲームを開発する新興企業Thirdverse(サードバース、東京)は、機器普及を前提に25年ごろに月間利用者1億人を目指す。国光宏尚最高経営責任者(CEO)は「学校や家庭、職場に代わる『第三の場所』をメタバース上につくる」と意気込む。
メタバース 「メタ(超越)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語で、インターネット上の仮想空間全般を指す。米SNS大手の旧フェイスブックは昨年、メタバースに注力するとして社名を「メタ」に変更。KDDIなどの日本勢も関連事業への参入に動きだした。メタバース内ではアバター(分身)を使って活動でき、不動産取引やニュース配信なども始まっている。今後はルールづくりが課題となる。メタバースという言葉は、米SF作家ニール・スティーブンスン氏が小説「スノウ・クラッシュ」で描いた仮想空間サービスの名称。