ノルウェー裁判所、ブルドッグの繁殖を禁止
呼吸器疾患など遺伝的疾患が問題に、「犬たちの完全勝利」
ノルウェーの首都オスロの裁判所は1月末、イングリッシュ・ブルドッグとキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの2犬種の繁殖は動物福祉法に反すると判決を下した。事実上の繁殖禁止となる。現地メディアが報じた。
ブルドッグなどの平面顔(短頭種)の犬種は愛嬌(あいきょう)のある表情で世界的に高い人気を誇る。一方で、呼吸器の疾患など犬種特有の遺伝的な健康問題を抱えている。判決はこの遺伝的疾患を理由に繁殖そのものに懸念を示した格好だ。
この判決は世界的な規制強化の先例となったり、パグやシーズーなど他の平面顔の犬種の制限につながったりする可能性がある。このため、動物愛護団体や愛犬家らの活発な論争を呼んでいる。
訴訟はノルウェー動物保護協会(NSPA)が、愛犬団体のノルウェーケネルクラブ(NKK)やブリーダー団体などを相手に起こした。遺伝的疾患が判明しているにもかかわらず、繁殖を行うことの倫理性が争点となった。
NSPAのオーシルド・ロールドセット代表は「犬たちの完全勝利だ」と表明。その上で「人間が引き起こしたブルドッグの健康問題は20世紀初頭から知られていた。この判決は遅過ぎたくらいだ」と指摘した。
判決では被告となった団体の繁殖が非合法となる一方、既に飼われている犬には影響はなく、また個人による繁殖も対象外となる。このため、NKKのトム・マルティンセン代表は声明で「われわれは動物の福祉を第一に考えている。繁殖を禁止しても、無責任な悪徳ペット業者が市場を占拠することになるだけだ」として上訴した。
平面顔の犬種は日本でも欧米でも人気が高く、新型コロナウイルスの世界的流行も背景に需要が急増している。一方、遺伝的疾患への懸念も広がっており、英動物愛護団体ブルークロスは昨年10月からブルドッグなどの犬種を広告で起用しないよう企業・団体に呼び掛けている。(ロンドン時事)