各地で出陣式、フィリピン大統領選挙戦始まる
独走マルコス氏に「臆病」批判、討論会を相次いで欠席
フィリピンで8日、5月に行われる大統領選挙のキャンペーンが解禁され、3カ月間の選挙戦が始まった。世論調査では、かつて独裁体制を築いた故マルコス元大統領の長男、マルコス元上院議員が首位を独走する。しかし、守りに入るマルコス氏は討論会を相次いで欠席。「臆病」という批判が出ている。
マルコス元大統領は、民主活動家を虐殺したり巨額の不正蓄財をしたりして1986年に追放された。人権侵害を受けた被害者らは一族の復権を強く警戒し、マルコス氏の立候補に抗議している。
だが、35年の時を経て独裁政権の記憶は風化が進み、若い世代を中心に「マルコス」に対する抵抗感は薄れている。昨年12月に行われた三つの主要な世論調査で、マルコス氏はいずれも50%超の支持を獲得し、2位のロブレド副大統領に31~40ポイントの大差をつけた。
ただ、最近マルコス氏への批判が相次いでいる。民放最大手が先月22日に放送した主要候補者のインタビュー番組にマルコス氏だけ出演を辞退。厳しい追及を恐れたとみられ、ツイッターには「臆病者マルコス」のハッシュタグが作られた。ドゥテルテ大統領がマルコス氏を「甘やかされて育った」「弱い候補者」と評価していることについて、「(これだけは)ドゥテルテが正しかった」としたツイッターの投稿は9000件を超える「いいね」を集めた。
「臆病ではない。あらゆることに立ち向かう準備がある」。マルコス氏はそう反論したが、今月4日も、全国300のテレビ・ラジオ局が生放送した討論会を欠席した。討論会の時間帯に出演したテレビ番組では料理する姿を披露。番組側が「収録日時はマルコス陣営が指定した」と明かすと、ツイッターで「討論会で料理されるのを嫌い、料理番組に逃げた」とやゆされている。
大統領選の主要候補は8日、各地で「出陣式」を開催。マルコス氏は5万5000人を収容可能な首都近郊の競技場で第一声を上げる。(マニラ時事)