冬眠中のジリス、腸内細菌で筋肉減少を抑制
米大学が発表、高齢者の筋肉減少対策に応用できる可能性も
北米に生息する「ジュウサンセンジリス」(リス科)は、冬眠中に筋肉のたんぱく質を分解して生じるアンモニアを腸内細菌の働きで再利用し、筋肉の減少量を抑えているとみられることが分かった。米ウィスコンシン大の研究チームが28日付の米科学誌サイエンスに発表した。この仕組みは将来、高齢者の筋肉減少対策に応用できる可能性があるという。
ジュウサンセンジリスは13本のしま模様が特徴。冬眠で半年近く絶食している間、体の代謝を低下させるとともに筋肉を分解して利用するが、春に冬眠から目覚めた際、衰弱した様子がないのが謎だった。
筋肉の分解などで生じたアンモニアは肝臓で尿素の合成に使われ、尿素は血液で体内に運ばれる。通常は腎臓を経て尿として排出されるが、冬眠中は腸内で細菌が尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、アンモニアを使ってアミノ酸を合成する働きが高まる。このアミノ酸がジリスの腸で吸収されるなどして、たんぱく質の材料として再利用されることが分かった。
尿素分子は水素や酸素のほか、炭素や窒素の原子を含む。研究チームは自然界では少ない炭素や窒素の安定同位体で尿素分子に目印を付け、ジリスの体内での分解、再利用の過程を追跡した。