地球温暖化が冬季五輪に暗雲、適地は札幌だけ?
国際研究、今世紀末には適地が限定、「パリ協定」達成を
地球温暖化によって、今世紀末に冬季五輪を適切に開催できるのは札幌だけになる-。国際的な研究チームが、温室効果ガスの排出量を劇的に削減しなければ、スノースポーツなどの競技に適した冬季五輪の開催都市が極めて限られてくるとの報告書を公表した。北京冬季五輪を来月に控え、気候変動がウインタースポーツに与える影響が浮き彫りとなった。
カナダ・ウォータールー大などの研究チームがまとめた報告書によると、現在の温室ガス排出量の水準が続くと想定した場合、これまでに冬季五輪が開かれた20都市と北京のうち、今世紀末も適切な環境で開催できるのは札幌(1972年開催)だけだった。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が掲げた排出削減目標を達成できた場合は、長野(98年開催)を含む8都市に増えるという。
研究チームは20カ国・地域の第一線で活躍する選手とコーチの計339人から聞き取り調査を実施。気温や雨、雪質や積雪量に関して、公平で安全な競技環境の指標を作成し、気候変動の影響で競技環境がどのように変わるかを調べた。
冬季五輪開催都市の気温は右肩上がりで上昇。1920~50年代の大会では開催都市の2月の日中平均気温は平均0・4度だったが、60~90年代は3・1度、21世紀の大会は6・3度となった。将来は気温がさらに上がる見通しという。
研究チームを率いる同大のダニエル・スコット教授は「スノースポーツを守り、冬季五輪の開催地を世界中に確保するためには、パリ協定の目標達成が重要だ」と強調している。(ロンドン時事)