インドネシア国会、首都移転の法案を可決


カリマンタン島「ヌサンタラ」に、課題山積の見切り発車

インドネシア国会、首都移転の法案を可決

インドネシアの新首都に作られる大統領宮殿とオフィスのデザイン(制作者ニョマン氏のインスタグラムより・時事)

 インドネシアの国会は18日、首都移転の法案を可決した。首都を現在のジャカルタからカリマンタン島東部へ移すもので、政府は今後、開発に着手できる。ただ、必要な予算の確定や資金の確保を後回しにした他、環境破壊や災害といった山積する課題への対応も議論されておらず、見切り発車した格好となった。

 時事通信が入手した法案によると、新首都の地名は「ヌサンタラ(群島)」。陸の面積は25万ヘクタール余で、大臣クラスが治める特別な自治体となる。一方、必要な予算と国費の投入額、開発や移転の開始時期については「政令や規則で定める」と記すにとどめた。

 首都移転には当初466兆ルピア(3兆7000億円)の資金が必要で、19%を国費から拠出し、残りは資産運用や民間出資で賄うと発表された。だが、出資を表明した企業はなく、新型コロナウイルス対策で国の財政は大幅に悪化した。

 開発に伴う森林破壊と動植物への悪影響が懸念されている他、移転先の近くで頻繁に洪水が起きていることも判明。市民団体や専門家は移転に反対している。

 研究機関インドネシア政治批評のウジャン常任理事は時事通信の取材に、「大勢が解雇されたコロナ禍で国民は首都移転を望んでいないが、ジョコ大統領はレガシー(遺産)を作るため強行するだろう」と解説した。実際に担当閣僚は先月、大統領の任期が終わる前の2024年前半に法律上の移転を先行させる方針を表明している。

 首都移転は19年8月にジョコ大統領が表明。ジャワ島に集中する人口と経済活動の分散を目的に挙げた。災害リスクが低く、国の中央に位置するカリマンタンを選んだと説明した。(ジャカルタ時事)