ウイグル問題が欧米企業の「踏み絵」に
北京冬季五輪控え対立激化、民間企業が米中の板挟みに
2月4日開幕する北京冬季五輪を前に、中国・新疆ウイグル自治区の人権侵害問題をめぐる米中対立が激化し、企業活動に暗い影を落としている。米国が強制労働を理由に対中圧力の強化を同盟国などに促したのに対し、中国はこれに同調しないようけん制。民間企業は板挟みとなり、ウイグル産品の使用を中止するか否かの「踏み絵」を迫られている。
米中対立に拍車を掛けたのが、昨年12月に米国で成立した「ウイグル強制労働防止法」だ。ウイグル自治区からの輸入を全面的に禁止することで、国の威信を懸けて五輪を成功させたい中国に圧力を加え、事態打開につなげる狙いがある。米議会や人権団体も、ウイグル産品の排除を企業に強く要請している。
ただ、欧米企業などがウイグル産品を製品材料に使うことをやめれば、中国の巨大市場で反発を招き、不買運動を起こされる恐れがある。
過去には、スウェーデンのカジュアル衣料大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)がウイグル産綿花を調達しない方針を示唆し、中国で不買運動に直面した。米半導体大手インテルは昨年末、ウイグル産品やウイグル人労働力を利用しないよう仕入れ先に伝えたと非難され、謝罪に追い込まれた。
米小売り大手ウォルマートも昨年、中国で展開する会員制食料品チェーン「サムズクラブ」からウイグル産品が消えたという臆測がインターネット交流サイト(SNS)で拡散。一部の店舗で退会者が続出した。
中国共産党の中央規律検査委員会は、サムズクラブが「悪意を持ってウイグル産品を陳列棚から撤去した」と批判。人権問題に関する中国の立場や国民感情を尊重するよう、ウォルマートにクギを刺した。
中央規律検査委は共産党幹部の汚職を取り締まるのが本来の役割で、人権問題で意見を表明するのは異例。中国に進出している他の欧米企業などは、暗に威圧される形となった。
一方、米国では「人権意識が低い」と見なされた企業への風当たりが強まっている。米税関当局は昨年1月、ウイグルでの強制労働をめぐる輸入停止措置に違反した疑いがあるとして、カジュアル衣料「ユニクロ」のシャツの輸入を差し止めた。米電気自動車(EV)大手テスラはウイグル自治区に販売店を開設したことが明らかになり、米議員から「弾圧の隠蔽(いんぺい)」に加担したと非難された。(ワシントン、北京時事)