タル・ベーラ監督初期の代表作3作品を一挙公開
「アウトサイダー」など、シアターイメージフォーラムで
2011年に映画『ニーチェの馬』を発表後、56歳という若さで映画界から身を引いたタル・ベーラ監督の初期作品が、1月29日からシアターイメージフォーラムで一挙公開される。
上映するのは、初期の代表作とされる『ダムネーション/天罰』(1988年)、『ファミリー・ネスト』(1977年)、『アウトサイダー』(1981年)の3作品。
荒廃した鉱山を舞台に不倫や裏切りなどの罪に絡め取られていく人々の姿を描いた、『ダムネーション/天罰』は、タル・ベーラ監督のほか、脚本家のラースロー、音楽を担当したヴィーグ・ミハーイが集い、後の“タル・ベーラスタイル”と言われる映画製作を確立した作品とされている。 同作品は、1994年に発表される7時間18分に及ぶ大作映画「サタンタンゴ」を制作する目的で製作陣が集められた。ところが予算と時間がかかることが分かったため先に完成させた作品だった。
それでも「映画史上最も素晴らしいモノクロームショット」という高い評価を受けた。
『ダムネーション/天罰』が監督の映画製作スタイルを確立した作品とするなら『ファミリー・ネスト』は、監督としてのデビュー作品で、住宅難のブダペストで夫の両親と暮らす若い夫婦の姿を16㍉カメラを用いドキュメンタリータッチで撮影した。撮影期間は5日間。監督は当時22歳。共産党政権下にあったハンガリーの厳しい世情を直視するモノクローム作品となっている。
一方、『アウトサイダー』は監督の作品としては珍しく、カラー作品として発表された。社会に適合できないミュージシャンの姿を描いた同作品は、監督として長編2作品目でありながら、ハンガリー政府当局に目をつけられた作品でもある。
(村松澄恵)