カザフフスタンの実力者、ナザルバエフ氏失脚


大統領として30年近く統治、反政府デモで混乱拡大

カザフフスタンの実力者、ナザルバエフ氏失脚

5日、カザフスタン南部アルマトイで、反政府デモに対応する治安部隊(EPA時事)

カザフフスタンの実力者、ナザルバエフ氏失脚

5日、カザフスタン南部アルマトイで、政府に抗議するデモ参加者(AFP時事)

カザフフスタンの実力者、ナザルバエフ氏失脚

5日、カザフスタン南部アルマトイで、反政府デモに対応する治安部隊(EPA時事)

 中央アジア・カザフスタンのトカエフ大統領は5日、反政府デモが全土に拡大する中、地元テレビを通じて国民向けに演説し、ナザルバエフ前大統領に代わって、自身が安全保障会議議長に就任すると発表した。ナザルバエフ氏が失脚したことを意味する。報道によると、デモ隊との衝突で治安部隊の8人が死亡した。

 ナザルバエフ氏は旧ソ連末期から30年近くカザフを統治。大統領の座を2019年にトカエフ氏に譲ってからも影響力を保持してきたが、実力者の失脚により、中国とロシアに挟まれた地政学的な要衝でもある資源国は大きな転機を迎えた。

 今回の反政府デモは、燃料価格高騰をきっかけに西部マンギスタウ州から始まり、最大都市の南部アルマトイなどに波及した。デモ隊は「(ナザルバエフ氏は)去れ」と叫んで警官隊と衝突。拘束されたデモ参加者は全土で数百人規模になるなど、強権的に治安を維持してきたカザフで異例の事態に発展し、非常事態宣言も出された。

 トカエフ氏は5日の演説で「死傷者が出ている」として、デモ隊を非難するとともに、国民に平静を呼び掛けた。暴徒には断固とした措置を取ると警告する一方、政治改革も約束した。

 これに先立ち、トカエフ氏は事態の沈静化を図るため、マミン首相率いる内閣を退陣させ、スマイロフ第1副首相を首相代行に充てた。しかし、アルマトイ市庁舎にデモ隊がなだれ込み、旧アスタナからナザルバエフ氏のファーストネームに改称された首都ヌルスルタンではインターネットが遮断されるなど混乱が広がった。

 ロシアの著名ジャーナリストは外交筋の話として、ナザルバエフ氏が「療養」名目で出国する可能性があると明らかにした。過去に失脚した中央アジアの指導者と同様、ロシアに向かうシナリオも考えられる。(時事)