折れた優しい心、気力なくした琴欧洲


琴欧洲が引退を表明、大関在位47場所で優勝1回

折れた優しい心、気力なくした琴欧洲

引退を表明し、記者会見で涙を拭う元大関の琴欧洲=20 日、大阪・ボディメーカーコロシアム

 優勝しても泣かなかった琴欧洲が、むせび泣いた。今場所10日目の白鵬戦を振り返った時だ。「勝っても負けても、思い切りぶつかろうと思った。見に来てくれたお客さんのために…」。後は言葉を継げなかった 。

 引退を決意して臨んだ一番では、上手投げを打った白鵬が驚くほど、あっけなく土俵に手をついた。「横綱の顔を見ることができなかった。自分の終わりが来たことを感じた」。情けない自らの姿に、引き際を悟った 。

 前まわしを引いて一気に寄る相撲を武器に、2008年夏場所で初優勝。恵まれた体格を生かした取り口は魅力だったが、気迫を出すことは少なかった。苦手を前にすると明らかに表情を曇らせ、気の弱さものぞいた。師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は「もっと荒々しくてもよかった」。勝負師向きではなかった心を残念がった 。

 膝のけがや昨年九州場所で脱臼した左肩が癒えず、今年初場所には関脇に転落した。白鵬戦を終えた夜、師匠から「本当に悔いはないのか」と問われ、「もう気力がない」と答えた。「心技体がそろっていなかった」という元大関に一度切れた気持ちを奮い立たせる力は、残っていなかった。