海外産マグロ、ここ数年で入荷がめっきり減少
円安や相場低迷で集まらず、豊洲ではピークの8分の1以下
マグロ消費大国として世界中から魚を買い集めていた日本の水産物市場ではここ数年、海外産マグロの入荷が急速に減り続ける事態に直面している。円安や新型コロナウイルス流行の影響などで国内業者の購買力が落ち、消費力旺盛な海外市場に魚が流れているためという。
マグロ取引量が国内最多の東京・豊洲市場(江東区)では今年、海外産生鮮マグロ類の年間入荷量が12月中旬現在、約1万1400匹にとどまる。これは、移転前の築地市場(中央区)時代を含む過去20年間で最少だった昨年を27%下回る量で、ピークだった2002年ごろの8分の1以下にまで落ち込んでいる。
特に、減少が目立つのはインドネシアやオーストラリアからの輸入が激減した生のメバチマグロで、このほか地中海各地とメキシコ産のクロマグロなども大きく数を落としている。減少した要因についてマグロ輸入を手掛ける大手水産会社のマルハニチロは「コロナ禍で乗組員などが集まらないほか、景気が回復している欧州、北米市場の需要が拡大しているため」(広報担当者)と説明する。
別のある輸入業者は「賃金と物価が上がっている諸外国はマグロの取引価格も高く、今の日本は売り先として魅力がないため」と付け加える。今年の秋以降の米国でのクロマグロの取引価格は、天然物、養殖物とも日本より2割近く高くなるケースもあったという。
築地、豊洲市場の過去5年間の取引相場を見ると、メキシコ産養殖生マグロが1キロ当たり2500円前後、東南アジア産メバチが同1500円前後でほとんど相場は変動していない。仕入れコストを抑えた安価な回転ずしや量販店の持ち帰りずしの台頭もあり「数は減っても(取引価格を)上げられるような雰囲気ではない」と豊洲市場の販売担当者は嘆く。
世界各地の良質なマグロが、当たり前のように取引されていた時代は、もう来ないかもしれない。