英仏海峡の密航急増、裏で犯罪組織が暗躍
ボート沈没で27人が死亡する事故も、コロナ禍も影響
フランスから英国へ船で海峡を渡る不法移民・難民が増加の一途をたどっている。24日にはボートが沈没し、子供を含む27人が死亡した。密航急増の裏には手引きする犯罪組織の暗躍がある。一方、英仏両政府は「取り締まりが不十分」と互いを非難している。
ボートはゴム製で、仏カレー沖で空気が抜け、惨事となった。ダルマナン仏内相によるとイラク人とソマリア人の2人が救助された。
2019年に約1900人だった海峡越えの不法移民らは昨年8420人に増え、今年は2万5000人を超えた。多くはイラクなど中東出身者だ。
BBC放送は難民支援組織の話として、英国内に親族や知人のつてがある密航者が少なくないと伝えている。ダルマナン内相は25日、英国では不法滞在でも職を得やすいことがあり、難民を引き付ける要因になっているとの見方を示した。
新型コロナウイルス感染の流行で入国規制が敷かれ、主流だった英仏海峡トンネルを使ったトラックでの密入国が難しくなった。犯罪組織はボートによる密航請け負いを活発化させ、英報道だと1人当たり日本円で45万~80万円を要求するという。
英国は警備でフランスに資金拠出を申し出て、一定の協力を進めている。しかし、仏海岸を合同パトロールする英提案を仏側が受け入れないことなどから、英政府は不満を強めている。英国の欧州連合(EU)離脱後、漁業権などをめぐって両国関係がぎくしゃくしているのも信頼欠如に影響しているようだ。
ジョンソン英首相は24日、「一部のパートナー、特にフランスから必要な協力を得るのに難儀している」と述べた。マクロン仏大統領は同日のジョンソン氏との電話会談で「悲劇を政治目的に利用するのは控えるべきだ」と反論したとAFP通信は伝えている。(ロンドン時事)