アフガニスタン旧政府軍兵士ら、ISに合流
報復への恐怖など混乱からISへ、タリバンが警戒強化
アフガニスタンで、イスラム主義組織タリバンが崩壊させた旧民主政権の政府軍兵士や情報機関員が、タリバンと敵対する過激派組織「イスラム国」(IS)系武装勢力に合流しつつあると伝えられている。ISへ逃れる背景には、タリバン暫定政権による報復への恐怖や、給与未払いといった混乱があるとみられている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は10月31日、かつての同僚がIS系勢力に加入したという複数のアフガン軍、治安関係者の証言を報じた。まだ「比較的少数」とみられているが「増加しつつある」と警告した。軍事の専門知識や治安の機微に触れる情報がIS系勢力に流れ込めば、組織の強化が飛躍的に進む恐れがある。
タリバンは「全国民への恩赦」を宣言し、政権への協力を呼び掛けたものの、旧民主政権関係者への私刑が相次ぎ、恐怖が広がっている。WSJによると、複数の情報機関員がタリバンに家を割り出され、訪問を受けた後にIS系勢力に加わった。
WSJは、タリバン暫定政権下で経済が破綻する中、IS入りに際し提示される「相当量の現金」もISへの転向の一因になっていると指摘。一連の流れが「まさに、旧フセイン政権後のイラク(の混乱)が始まった状況」と酷似していると分析する欧米の政府高官の懸念を伝えた。
首都カブールにある警戒厳重なはずの軍の病院が2日、武装集団に襲撃され、少なくとも25人が死亡、IS系勢力が犯行を主張した。これも警備の隙を突く情報の流出による攻撃だったのではないかと疑われている。カブールでは他にも、タリバン戦闘員が集まっている場所が攻撃されたと伝えられている。
タリバン最高指導者アクンザダ師は、4日の声明で「反政府的な動きがあれば即座に撲滅しなければならない」と幹部らに檄(げき)を飛ばした。AFP通信は、内通者への警戒をタリバンが強めていると報じている。(ニューデリー時事)