欧米諸国、北京冬季五輪で外交ボイコット論
ウイグルなどへの人権侵害に反発、米政権の判断に注目
中国・新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に反発する欧米諸国で、来年2月の北京冬季五輪をめぐり、開会式などへの高官派遣を見送る「外交ボイコット」を求める声が高まっている。北京五輪への対応に関し、同盟国と「共通のアプローチ」を協議するとしているバイデン米政権の最終判断が各国の動向を左右しそうだ。
米議会では、民主党のペロシ下院議長が5月に各国首脳に外交ボイコットを提案。超党派で法案化の動きも出ている。共和党のルビオ上院議員らは今月21日、国際オリンピック委員会(IOC)に開催地変更を改めて要求した。ウイグル族迫害を「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する一方で、ボイコットに慎重な構えを崩さないバイデン政権への圧力が強まっている。
ただ、ソ連のアフガニスタン侵攻を受けた1980年のモスクワ五輪ボイコットのように、米国が外交ボイコットを主導するかは不透明だ。バイデン大統領は年内に、中国の習近平国家主席とオンライン形式の首脳会談を行う予定。この会談や再開した貿易協議の行方が五輪対応の「道しるべ」(米外交誌フォーリン・ポリシー)になるとみられる。
欧州では、英下院の外交委員会が6月、新疆の人権問題を受け、政府当局者による五輪式典の全面不参加を勧告。7月には外交ボイコットを求める非拘束決議が採択された。政府の方針は未定だが、決議案を主導したロートン議員(保守党)は「トラス外相が真剣に検討しているようだ」と述べ、ボイコット発動に期待を示した。
欧州議会も中国の人権問題に厳しい姿勢を見せる。7月8日に採択した決議では、中国政府が香港や新疆などでの人権侵害について「検証可能な改善」を示さない限り、政府代表や外交官に対する北京五輪への招待を辞退するよう加盟国や欧州委員会などに求めた。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は15日、習氏との電話会談で、中国の人権状況への懸念を改めて表明。人権問題をめぐる対話継続の必要性を訴えた。
ドイツは政権移行期ということもあり、正式な立場は表明していない。ただ、第1党として政権獲得の可能性が強まる社会民主党(SPD)のフライターク下院スポーツ委員会委員長は11日、DPA通信に対し、ペロシ氏が提案した外交ボイコットに「共感する」と表明している。(ワシントン、ロンドン、ブリュッセル、ベルリン時事)