アプリ課金見直し命令、追い込まれる米アップル
自社以外の決済方法も案内へ、高収益事業モデルに打撃
米アップルが10日、米連邦地裁からアプリ配信サービスの課金ルールを見直すよう命じられた。アプリ開発企業が、利用者にアップルのシステム以外の決済方法を案内できるよう規則の緩和を指示する内容だ。外部決済の利用が進めば、手数料収入で収益を押し上げてきたアプリ配信の事業モデルに打撃となる。
裁判は昨年、人気ゲーム「フォートナイト」を手掛けるエピック・ゲームズがカリフォルニア州の連邦地裁に提起。アップルが、スマートフォンでアプリを立ち上げたまま決済する「アプリ内課金」で自社以外の手段を認めていないことや、アプリ開発企業に売上高の最大30%と「高額な」手数料を強制していることが、反トラスト法(独占禁止法)違反に当たると主張した。
判事は「デジタルモバイルゲーム」市場における独占の有無を検討。競争阻害の立証が不十分と指摘した上で「アップルが独占企業とは言えない」と同法違反の主張を退け、アプリ内課金の現状を追認した。
一方で、アップルがアプリ開発企業に対し、アプリ内や電子メールで利用者を外部の決済手段に誘導することを禁じた規則は州法に基づく反競争的行為だと認定。「消費者の選択を妨げている」として差し止めを命じた。
アップルは8月下旬以降、音楽や電子書籍を配信する「リーダーアプリ」など一部について、この規則の緩和を発表。裁判を優位に進めようと試みた。ただ判事は今回、より広範な緩和をアップルに命じており、アプリ配信による収益の7割を占める稼ぎ頭のゲームアプリも対象となる。
差し止め命令は、90日以内に異議を申し立てれば発効を止められる。ただ、連邦議会の超党派は、アップルや米グーグルがアプリ内課金の利用をアプリ開発企業に強制することを禁止する法案を提出しており、逆風は当分やみそうにない。(シリコンバレー時事)