デジタル庁がきょう発足、「脱アナログ」へ難題
デジタル化の遅れを挽回へ、まずはマイナンバーカード
政府がデジタル政策の司令塔と位置付けるデジタル庁が9月1日に発足する。新型コロナウイルス禍で浮き彫りとなった日本のデジタル化の遅れを挽回するのが最大の使命だ。ただ、当面の課題である全国規模でのシステム統一をクリアしても、国民との接点となるマイナンバーカードの普及は難題。住民一人ひとりが行政サービスの向上を体感できる日がいつ来るのかは見通せない。
デジタル庁創設は、菅義偉首相が昨年9月の自民党総裁選の公約に掲げた肝煎りの政策で、今年5月に関連法を成立させた。首相は8月31日の閣僚懇談会で「スマートフォン一つで役所に行かずともあらゆる手続きがオンラインでできる社会を目指して、システムの統一・標準化やマイナンバーカードの普及に取り組む」と熱意を示した。
新型コロナの感染拡大に伴い、給付金の支給遅れ、病院と保健所の情報共有の混乱、感染者との接触を確認するアプリ「COCOA(ココア)」の不具合など問題が相次いだ。デジタル庁は、国の情報システム整備に関する予算や権限を一手に握る。各府省や自治体がばらばらに構築してきたシステムを統一、コスト削減と連携強化を図る。
子育てや引っ越しなどで必要となるオンライン手続きの促進でカギを握るのは、本人確認に使うマイナンバーカードの普及だ。政府は2022年度末までにほぼ全国民が取得する目標を掲げる。だが、最大5000円分のポイント付与でてこ入れを図ったものの、現時点の交付率は4割未満と目標達成には程遠い。
マイナンバーは希望すれば預貯金口座とひも付けでき、給付金の迅速な支給に道を開く。平井卓也デジタル改革担当相は「給付金は知らない間に振り込まれていた、というのが一番いい」と目指す姿を説明しているが、口座情報が当局に把握されることには国民の抵抗感が根強い。
事務方トップの「デジタル監」には民間出身の石倉洋子・一橋大名誉教授(72)を起用。職員は民間から採用した約200人を含め、総勢600人規模で始動する。当初500人規模を見込んでいたが、「ミッション(任務)が多い」(関係者)として体制が膨らんだ。