米国、国益重視で史上最長の軍事作戦に終止符
期限内の撤収にこだわったバイデン氏、決断の正当性訴える
米国はアフガニスタン駐留部隊を引き揚げ、「米史上最長の戦争」に終止符を打った。20年前の米軍侵攻で政権の座を追われたイスラム主義組織タリバンが、再び権力を掌握。現地に在住する米国人らの退避が最後の任務となった米軍の姿は、海外での大掛かりな軍事作戦の是非について、これまで以上に国益との兼ね合いで判断せざるを得ない米国の現状を象徴している。
バイデン大統領は、20年前のアフガン侵攻について「米同時テロの首謀者らを捕らえ、(国際テロ組織)アルカイダが再びアフガンをテロの基地として使わないようにするという明確な目標があった」と主張。アルカイダ首領のビンラディン容疑者を殺害し目標を達成した以上、その後の国家建設は米国の役割ではないと訴えてきた。
実際、トランプ前政権とタリバンの合意に基づき、一時10万人を超えたアフガン駐留米軍は、バイデン政権発足時には2500人規模にまで縮小。「タリバン掃討」が早い時点で、米国の描くシナリオから消えていたのは確かだ。
米国はタリバンの攻勢を食い止め、停戦と政治対話を通じた内戦終結に持ち込むことに望みをつないだが、頼みのアフガン政府軍は早々と崩壊。米国としては目算が外れた形だが、バイデン氏は「米軍があと1年、5年、20年長く駐留したところで何も変わらない」と期限内の撤収にこだわった。
米国は既に1兆ドル(約110兆円)以上をアフガンに投じ、数千人の米兵が命を落とした。冷戦期と異なり、膨大な軍事費と米兵の犠牲を伴う軍事作戦の継続は、それに見合う国益を見いだせない限り困難という現実が、米大統領の前に立ちはだかっている。
オバマ元大統領も、アフガン侵攻を始めたブッシュ(子)元大統領ですら「世界の警察官にはなりたくない」として、紛争への軍事介入に消極姿勢を示していた。オバマ氏はアフガン撤収方針を撤回したが、国益重視を前面に押し出したトランプ前大統領は撤収への道を突き進んだ。
今回の判断には欧州など同盟国からも、不満や不安の声が上がる。それでもバイデン氏は「国益に沿わない紛争で際限なく戦い、国家再建のために米軍を際限なく駐留させるという過ちを繰り返さない」と強調。再三否定してきた前任者の「米国第一」主義を踏襲するかのような言葉で、決断の正当性を訴えた。(ワシントン時事)