島国ハイチ、立て続く国難、年内選挙は難しく


政情不安で大地震からの復興に遅れ、水野光明大使に聞く

島国ハイチ、立て続く国難、年内選挙は難しく

ハイチ南西部レカイ郊外で地震により倒壊した家屋=16日(AFP時事)

島国ハイチ、立て続く国難、年内選挙は難しく

カリブ海の島国ハイチ駐在の水野光明大使(時事)

島国ハイチ、立て続く国難、年内選挙は難しく

カリブ海の島国ハイチ

 大統領暗殺、マグニチュード(M)7・2の大地震と、立て続けに国難に見舞われたカリブ海の島国ハイチ駐在の水野光明大使が、21日までに時事通信の電話インタビューに応じた。水野氏は、政情不安により、31万人以上の犠牲を出した2010年の大地震からの復興が遅れているなどと「西半球最貧国」の現状を解説。今年11月に予定されている選挙の年内実施は困難との認識を示した。

 --ハイチの政情は。

 30年近い独裁政権の後、1990年の民主的選挙によりアリスティド政権が誕生したが、(政治経済を牛耳ってきた)財閥を敵視したため亡命を余儀なくされるなどその後も政治は安定しなかった。(7月7日に暗殺された)モイーズ大統領は伝統的エリートではなく、政財癒着にメスを入れようとして一部財閥との関係が悪化していた。

 暗殺については捜査の進展を待つしかないが、司法職員への脅迫が相次ぎ、裁判官らが着手を尻込みしている状況だ。11月に選挙が予定されていたが、被災地は選挙ができる状況ではない。一般論で言えば、年内の選挙実施は難しくなった。

 --なぜ10年の地震から復興が進んでいないのか。

 政情不安と治安問題が大きい。開発の成功には支援を受ける側の安定が必要だが、首相が頻繁に交代し、ドナー国としては話し相手が次々変わる状況だった。治安問題で援助団体が安心して活動できない「支援のしづらさ」も存在する。海外への頭脳流出も深刻だ。政官財あらゆるセクターで優秀な人材が不足し、なかなか政策が実現できず、地に足が着いた中長期的な開発戦略を立てられない状況だ。

 --日本政府の今後の方針は。

 人口の9割が貧しく、4割が日々の食べ物に困っている。地方では電気も通っておらず、生活必需品にも事欠く状況だ。日本は国際協力機構(JICA)を通じた無償資金協力などで病院、学校、橋などのインフラを整備してきた。今後もこれを継続したい。

 ハイチでは日本の支援を多くの人々が認識し、感謝してくれている。ただ、諸問題が未解決のまま、今回の震災のように次々と新たな問題が積み重なっている状況で、どこから改善すればいいか悩ましい。(サンパウロ時事)