特需に明暗、日本勢活躍受けスケボーなど販売増


無観客開催で宿泊軒並みキャンセル、航空はあきらめ顔

特需に明暗、日本勢活躍受けスケボーなど販売増

販売が伸びたミズノの五輪応援用Tシャツ(同社提供)

 新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がる中、ほぼ無観客で開催された異例の東京五輪が閉幕した。日本勢が活躍したスケートボードなど関連商品の販売が活況を呈する一方、開催を疑問視する声は根強く、トヨタ自動車が関連テレビCMの放映を見送るなど波紋も広がった。スポンサー企業や宿泊業界などは当初見込んだ「五輪特需」の恩恵を受けられず、明暗が分かれる形となった。

 スポーツ用品大手アルペンは、スケートボードで日本勢が金メダルを獲得したのを機にボードの仕入れを2倍強に拡充。卓球やバドミントン用品の販売は昨年から3~5割増えた。商戦に手応えを感じる同社の水野敦之社長は5日の記者会見で、「ニーズをいち早く察知して対応したい」と力を込めた。応援用Tシャツなどを販売するミズノは、五輪関連商品の売れ行きが開幕前の4倍超に伸びた。

 アサヒビールの東京五輪・パラリンピック公式ビール「スーパードライ」は、7月下旬の缶の販売数量が前年の同時期と比べ3割増となった。自宅でビールを片手に観戦する人も多かったとみられる。星野リゾート(長野県軽井沢町)は東京都豊島区の宿泊施設で、24時間卓球を楽しめるサービス「ピンポンホテル」を9月5日までの期間限定で開催。夏休み中のレジャー需要の取り込みを目指す。

 一方、こうした流れに乗れなかった企業も少なくない。都内の大手ホテルでは、当初は満室に近い予約が入っていたが、無観客開催が決まったことで五輪関連の宿泊が軒並みキャンセル。広報担当者は「残念だが、感染を防ぐためだから致し方ない」と肩を落とす。旅客回復のチャンスを失った航空会社の関係者も「それほど期待していなかった」とあきらめ顔だ。

 今回の五輪は、開催方法をめぐる突然の方針転換や運営担当者の交代といった混乱が開幕直前まで相次いだ。振り回されたスポンサー企業の幹部は「何の相談も説明もなかった」と政府や関連団体の対応を批判、「もうスポンサーはやりたくない」とうんざりした表情で語った。