タリバンに勢い、アフガン州都が初めて陥落
政府軍の脆弱さが改めて鮮明に、市民の犠牲者増加の懸念
アフガニスタンで、反政府勢力タリバンの攻勢が激しさを増している。6日には、5月に米軍など外国軍が撤収を開始してから初めて州都が陥落。支援を失ったアフガン政府軍の脆弱(ぜいじゃく)さが改めて鮮明になった。戦闘の激化により、市民の犠牲者増加も懸念されている。
タリバンは6日、イランと国境を接する南西部ニムルズ州の州都ザランジを制圧した。タリバンの広報担当者は7日、有力軍閥ドスタム将軍の影響下にある北部ジョズジャン州の州都シェベルガンについても、ツイッターで「州庁舎、警察や情報機関の本部などは全てタリバンの手にある」と奪取を宣言。西部ヘラート、南部のカンダハルやラシュカルガなど各州都でも猛攻を続けている。
タリバンの政府軍への攻撃は5月上旬ごろから強まった。実情は不明ながら、7月9日には「全土の85%を支配下に置いた」と主張。各地で近隣国との国境地帯や幹線道路の要衝を制圧、物流を寸断するとともに、国境検問所では通行税を徴収するなど、名実ともに政府から権力を奪っている。
6万~8万5000人程度とされるタリバン兵に対し、政府軍や治安要員は総計約30万人と数的には優位にある。ただ、出身部族が異なるといった背景から一体性を欠き、士気は相対的に低い。英BBC放送は6日、ザランジが「戦わずして陥落した」というニムルズ州副知事の話を伝えた。政府軍兵士の他国への逃亡例も報じられている。
一方、政府が軍の精鋭を送った各州都周辺では激戦が展開されている。国連アフガン支援団(UNAMA)トップのライオンズ国連事務総長特別代表は、6日の声明で「シリアやサラエボの状況を想起させる」と指摘。紛争悪化で市民の被害が増えることに懸念を示した。(ニューデリー時事)