マレーシアで感染拡大、ムヒディン首相崖っぷち
「コロナ失政」で辞任要求が噴出、国王も不信感を示す
深刻な新型コロナウイルス感染拡大に見舞われているマレーシアで、ムヒディン政権が存続の危機を迎えている。野党に加え与党内からもムヒディン首相辞任を求める声が噴出してきた。包囲網が一層狭まっている。
現地メディアによると、与党連合の一翼を担ってきた統一マレー国民組織(UMNO)は7月に入って「感染対策の失敗」を理由に首相支持を撤回、退陣を要求した。1月の非常事態宣言発令に伴い国会を閉鎖し、議会承認を経ずに重要政策を決めていく独善的な手法や、感染拡大を防げないことに国民の不満が募り、UMNOが同調した。
アブドラ国王も国会の早期招集を要望した。国王が政権に不信感を示すのは異例だ。世論への影響も大きい。追い込まれた首相は7月下旬、ようやく国会を再開した。
国会では首相退陣を求める動きがくすぶるが、首相は政権維持の姿勢を崩していない。離反したはずのUMNO内も一枚岩ではなく、UMNO出身閣僚が閣内にとどまっており、与党連合は辛うじて下院で過半数を維持しているもようだ。
ムヒディン政権は昨年3月に発足した。マハティール前首相が、自身を裏切って政権の座に就いたムヒディン首相を「(選挙を経ていない)裏口政権だ」と糾弾するなど、当初から「正当性がない」と野党の批判にさらされてきた。
その後、コロナ感染が急拡大し、退陣を求める声が一段と強まった。首相は「コロナ抑制が最優先課題」と訴え、ロックダウン(都市封鎖)も発動したが、感染抑制の兆しは見えない。コロナ感染者は累計100万人を超え、死者は1万人に迫っている。(シンガポール時事)