ベラルーシ選手が謝意、ポーランド大使館を訪問
反政権派擁護の隣国に亡命、駐日大使「日本と協力を続ける」
強権支配が続く本国からの帰国命令を拒否し、日本で警察などに保護された東京五輪陸上女子のベラルーシ代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手(24)は3日、亡命先となる母国の隣国ポーランドの在日大使館を訪問した。面会したミレフスキ駐日大使によると、同選手は元気な様子で感謝の言葉を述べたという。
ミレフスキ大使はツイッターで「彼女は元気で、彼女の無事を望まない人々とわれわれが闘い、支援の手を差し伸べたことに感謝している」と説明した。ツィマノウスカヤ選手は2日、在日ポーランド大使館で人道的理由からビザを受給。大使は受け入れに奔走したことを「外交官冥利(みょうり)に尽きる」とつづった。
第2次大戦に際して独ソに侵攻・分割され、戦後もソ連の影響下に置かれたポーランドは、今もロシアに手厳しい。ロシアを後ろ盾として「欧州最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのルカシェンコ政権を批判する急先鋒(せんぽう)であり、反政権派を擁護する。
ベラルーシでは昨年8月の大統領選後、選挙不正と長期政権に抗議する大規模デモが発生。政権が市民を徹底弾圧すると、反政権派はポーランドやリトアニアに亡命した。今年5月、搭乗機が強制着陸させられ、首都ミンスクで拘束されたジャーナリストのロマン・プロタセビッチ氏も亡命者の一人。この事件でも、いち早くポーランドは「前代未聞の国家テロ行為」(モラウィエツキ首相)と糾弾した。
ミレフスキ大使によると、ツィマノウスカヤ選手は、帰国を拒否して一夜明けた2日は「疲れ、おびえていた」という。大使は「自身のスポーツのキャリアにとって極めて困難な局面に際し、支援に大変感謝していた。彼女が安心・安全と感じられるよう、日本政府と良き協力を続ける」と強調した。(時事)