映像とアートの「第6回恵比寿映像祭」開催


「トゥルー・カラーズ」、世界を見つめる興味深い視点

映像とアートの「第6回恵比寿映像祭」開催

APIの展示空間。北極圏に住む先住民族の旗が並んでいる

 第6回恵比寿映像祭が東京都写真美術館その他を会場に今月23日まで開かれている。これは映像とアートの国際フェスティバルで、展示、上映、ライヴ・パフォーマンスなどで構成されている。

 総合テーマは「トゥルー・カラーズ」。色は色彩の意味の他に、文化や伝統、主義、人種なども表し、「らしさ」「本質」まで含んでいる。グローバリゼーションの中で失われたもの、守られてきたものを振り返り、交流の中から生み出されたものと、その可能性をさぐる試み。

 同美術館では全展示室を使って写真や映像作品を展示。興味深いのは、作者たちの現代世界を見つめる視点やアイデアの数々だ。

 キムスージャの写真「針の女」シリーズで登場するのは、長い髪を束ねたアジアの女性。舞台はデリー、メキシコシティ、カイロ、ラゴスという四つの都市の雑踏で、後ろ姿の彼女は異質な文化をバックに、周囲にのみ込まれないようにしっかり立っている。グローバリゼーションの中で変わらぬ自己を主張しているかのようだ。

 国際的なグループ「アークティック・パースペクティヴ・イニシアティヴ(API)」の活動舞台は北極圏。ここは世界で最も激しい利権争いの場になってきたが、彼らが着目するのは開発の中で無視されてきた先住民族たち。

 APIは彼らの伝統的な知識と近代的な技術を融合し、極地のニーズに合わせた通信、観測、電力、建築などの開発を行ってきた。その新しいビジョンを示す航空写真、発電システム、家具、調査記録など紹介している。(岳)