日本支援の女性警官が「アフガン社会に必要」
政府と和平交渉中のタリバン、幹部が異例の見解を示す
アフガニスタンの反政府勢力タリバンの幹部が、時事通信の取材に対し、日本政府が育成を支援してきた女性警官を含め、女性の政府職員についてアフガン社会に「必要だ」と認める見解を示した。外出など女性の権利を制限してきたとされるタリバンの幹部が、女性の社会進出に関し肯定的反応を示すのは異例だ。
アフガン政府とタリバンは昨年9月から、米国の後押しで、長期的停戦やタリバンを取り込んだ暫定政権の在り方などを話し合う和平交渉を続けている。ただ、女性や少数派の権利をめぐる両者の意見の隔たりは大きいとみられてきた。今回のタリバン幹部の発言には、タリバンが女性の社会進出にも一定の理解を示していることを強調し、国際社会の印象を良くすることで交渉を優位に進めたい思惑があるとみられる。
対話アプリを通じ、7月28日に取材に応じたのは広報担当のザビーフッラー・ムジャーヒド幹部。タリバンが関わる体制下でも「女性が犯罪に関わるケースがある。女性警官や検察官は必要だ。政府内では他にも女性が必要な部署はある」と述べた。
アフガンでは、部族的家父長制が根強く残り、家庭内暴力(DV)も横行している。家庭内では男女の居場所を厳しく区別する習慣も存在し、これに阻まれ男性警官が問題に踏み込めないケースが多かった。
日本政府は国際協力機構(JICA)を通じ、2014年からアフガン国外での研修などで女性警官の育成を支援。既に1500人以上が研修を受け、現場で活躍中だ。
女性の社会進出に関しては、米国とタリバンの和平合意直前の昨年2月、タリバンのナンバー2、シラジュディン・ハッカニ師が米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で「イスラム教が許容する範囲で、労働など女性の権利の平等」を認めると表明した。ただ、独自のイスラム教解釈を持つタリバンがどこまで女性の社会進出を認めるか、幹部らは明言を避けてきた。
タリバンは01年まで数年間、政権を担ったが、国際的承認を得られなかった。一連の「柔軟姿勢」の背景には、タリバンが暫定政権に組み込まれた場合でも国際社会から認められ得る存在だと誇示したい意図があるとみられる。(ニューデリー時事)