白星発進の白鵬、経験とうまさで必死にもぎ取る
進退を懸けて臨む名古屋場所、明生を掛け投げで仕留める
進退を懸けて臨む場所の初日。第一人者の取り口からは必死さが伝わってきた。白鵬はてこずりながらも、新小結の明生を掛け投げで仕留めた。「いろんな思いがある。ただいまって感じかね」。昨年3月の春場所で44度目の優勝を遂げた後、6場所連続休場。白星発進に自然と表情は崩れた。
その明るい口調とは対照的に、相撲ぶりは本来のものではなかった。右から張って左四つで組み止めたが、大きくはない明生とまわしの引き付け合いになって攻め切れない。外掛けにきた相手を左からの投げで転がし、「経験とうまさでちょっと上回った感じ」と率直に言った。万全でないことは、横綱本人が一番分かっているだろう。
3月に手術した右膝には厚いサポーターが。新型コロナウイルス感染拡大の影響で出稽古ができず、相撲勘を取り戻すのも難しい。「重さが(いつもと)違う。最後は柔らかさがあった」とは八角理事長(元横綱北勝海)。反応の良さ、技術面では白鵬らしさを発揮したものの、まだ力強さが戻っていないと分析する。
力士人生の岐路に立つ白鵬に今場所、求められるのは内容以上に白星。懸命な姿を見せて大事な初日を乗り越えた。その積み重ねが、道を切り開いていく。