広がるか、農薬や化学肥料に頼らない有機農業


環境重視、消費者の関心が高まる、負担や販路などに課題

広がるか、農薬や化学肥料に頼らない有機農業

有機食品専門店「ビオセボン恵比寿店」で有機栽培メロンを手にする岡田尚也ビオセボン・ジャポン社長=14日、東京都渋谷区(時事)

 農薬や化学肥料に頼らない有機農業に注目が集まっている。健康的なイメージに加え、地球環境への負荷が少ない農法として関心を持つ消費者が増えており、国も普及拡大の方針を打ち出した。ただ、重くなりがちな労力や費用の負担抑制、販路の整備など乗り越えるべき課題は多い。

 東京・恵比寿の有機食品専門店「ビオセボン」。6月の平日昼、会社員風の女性が有機栽培のレタスなどを使ったサンドイッチを手にレジに並んだ。岡田尚也ビオセボン・ジャポン社長は「最近は環境問題に敏感な若い世代が増えた」と話す。

 有機農業は堆肥で土づくりをし、雑草は農薬を使わず手作業で取り除く。人手はかかるものの、生物多様性の保全や温暖化防止につながるとして、欧州を中心に国際的なルール策定の機運が高まっている。

 日本も乗り遅れまいと5月、2050年までに全耕地面積の25%に相当する100万ヘクタールを有機農業とする目標を表明。農林水産省は害虫に強い品種の開発やロボット、ドローン(小型無人機)を使った除草・施肥など、作業の自動化を進めることで達成を後押しするという。

 ただ、日本の有機農業の割合は現在わずか0・5%。国土の狭さから生産効率が優先されてきた結果で、欧米に比べ高温多湿なことから害虫が発生しやすく、使用する農薬も多い。

 流通網整備も課題だ。有機農産物は一定の需要があるものの、生産量の少なさや形がふぞろいなことから、食品スーパーは「安定供給が見込めず、売り場の中心にはならない」(大手)と及び腰。農水省調査(16年)によると、価格も通常の4~8割高い。岡田氏は「日常的に買ってもらうには2~3割高程度に抑える必要がある」として、調達方法の見直しなどを進める方針だ。

 鹿児島市で30年以上有機農業に取り組んでいる大和田世志人さんは「有機農業を見る目は変わった。教わりたいとやってくる人も多い」としつつ、「生産したものが消費者に届く仕組みが必要」と訴えている。