地方自治体の資金調達、環境債の活用が広がる


欧州に狙い、環境に配慮した事業などに使途を絞った債券

地方自治体の資金調達、環境債の活用が広がる

環境施策が進むドイツの風力発電施設=2020年9月、独北東部クラインビュンツォウ(AFP時事)

 地方自治体による環境債(グリーンボンド)を活用した資金調達が増えている。環境に配慮した事業などに使途を絞った債券で、世界的に気候変動問題への関心が高まる中、欧州の投資家を狙ったユーロ建て債も発行された。調達先の多様化に一役買っており、一段の広がりが期待される。

 自治体に代わって市場からの資金調達を担う「地方公共団体金融機構」は2020年と21年、下水環境改善に充てるため、欧州市場で計10億ユーロ(約1300億円)の環境債を発行した。

 日本の自治体の環境債としては異例の規模だったが、環境問題への意識が高い欧州の機関投資家から応札が殺到。調達目標額の7~8倍の需要があり、「金利を低く抑えられるといった好条件」(同機構)で発行できた。

 20年に調達した5億ユーロ分は札幌市や仙台市、浜松市、名古屋市、神戸市、鹿児島市など各地の処理施設や下水管の整備などを使途とする。計1000万㌔㍗時以上の消費電力削減や水質改善を図るという。

 東京都や長野県なども環境債を発行、再生可能エネルギーの導入や水害対策を進めている。世界では各国政府が相次いで発行しており、非営利団体「気候債券イニシアチブ(CBI)」によると、ドイツやフランス、チリ、香港など少なくとも世界16カ国・地域が起債した。特に欧州では、環境債への旺盛な需要を背景に借り手にとって有利な条件が整いやすい。

 欧州資産運用大手アムンディは地方公共団体金融機構の環境債について、資金の使途といった条件が国際的な基準に合致していると評価。「(投資の)地域分散の観点から、海外投資家の需要も見込まれる」とし、日本の行政部門における環境債発行の広がりに期待感を示した。