津軽三味線とメイドで活躍、少女の成長物語
映画「いとみち」、駒井蓮など青森を代表する才能が結集
大ヒット映画「陽だまりの彼女」の原作者、越谷オサムによる青春小説「いとみち」(新潮文庫)を映画化した。コロナ禍での撮影中断という憂き目に遭いながらも、感染対策を万全にし、すべてのロケを青森県で敢行した。監督・脚本の横浜聡子が「市井の人々を描きたいということが、ずっと自分の映画作りの原動力」と語る通り、少女の成長を主軸とした人間群像ドラマが展開される。
青森県弘前市の高校に通う16歳の少女、相馬いと(駒井蓮)は、父親で民俗学者の耕一(豊川悦司)、一家の要で津軽三味線の名手でもある祖母・ハツヱ(西川洋子)と3人暮らし。特技は津軽三味線。祖母、母から受け継いだその腕前はかなりもので、大会では審査員特別賞を受賞するほどだ。だが、強い津軽なまりと人見知りな性格のため、心を開くことができない。
ある日、制服の可愛さに憧れて、「津軽メイド珈琲店」でアルバイトを始めることに。時にトラブルにも巻き込まれながら、個性豊かな喫茶店スタッフとの交流の中で、これまで内にこもっていたいとの思いが、だんだんと大きく広がっていく。その矢先、「津軽メイド珈琲店」存続の危機が訪れる。
主人公の相馬いとを青森県出身の駒井蓮。津軽三味線をゼロから1年かけて猛特訓、クライマックスの演奏シーンは本作の見どころだ。思春期の娘を不器用に見守るシングルファーザー・耕一にベテラン俳優の豊川悦司、祖母のハツヱ役には津軽三味線の巨星、故・高橋竹山の最初の弟子である西川洋子。このほか、いとの親友、早苗役に津軽地域のご当地アイドル「りんご娘」のジョナゴールド、アルバイト先のオーナー役に青森市観光大使の古坂大魔王など、青森を代表する才能が結集した。
6月18日より青森で先行上映、全国公開は25日から。新型コロナウイルスの状況により、変更の可能性もあるため、公式サイトまたは公開劇場で要確認。
(佐野富成)