記事内容に国安法の網、報道にさらなる萎縮


香港紙「リンゴ日報」発行元の幹部らを逮捕、資産凍結も

記事内容に国安法の網、報道にさらなる萎縮

香港紙「リンゴ日報」の羅偉光編集長=5月13日、香港(AFP時事)

 香港警察は17日、中国共産党や政府に批判的な香港紙「リンゴ日報」発行元の壱伝媒(ネクスト・デジタル)幹部ら5人を国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕した。警察は会見で、記事を通じて「中国や香港政府への制裁を呼び掛けた」疑いがあると説明。記事の内容が同法に抵触すると判断されたことで、報道関係者のさらなる萎縮を招く可能性がある。

 逮捕されたのは、壱伝媒最高経営責任者(CEO)の張剣虹氏やリンゴ日報編集長の羅偉光氏ら。国安法に定められた「外国勢力と結託し、国家の安全に危害を加えた」容疑が掛けられている。

 警察によると、問題視されたのは2019年以降に紙面やインターネット上で発表された30以上の文章。文章がニュース記事なのか識者の評論のようなものなのかは明らかにしなかったが、逮捕された5人は編集、発行上の責任があると見なされた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、匿名の意見記事や論評が含まれ、一部はリンゴ日報創業者の黎智英氏が書いたものだと報じている。

 警察は、国安法の規定に基づき取材資料も押収できると説明しており、関係場所の家宅捜索などに500人超を動員。当局はまた、関連3社の資産計1800万香港ドル(約2億6000万円)を凍結した。

 リンゴ日報をめぐっては昨年、黎氏が国安法違反容疑で逮捕、起訴されている。中国側は黎氏をたびたび名指しで非難しており、香港当局は先月、同氏の資産凍結を発表。リンゴ日報は香港主要紙で唯一、民主派支持を鮮明にしているが、相次ぐ圧力と経営難から存続自体が危ぶまれている。(香港時事)