「釣りの文化と技術」、仙台市歴史民俗資料館で
引き継がれた匠の技、穂先にはクジラのひげを
釣り道具の移り変わりをたどりつつ、「娯楽」や「趣味」としての奥深さを探り、あわせて宮城県の伝統的工芸品として有名な釣り竿(さお)・仙台竿(アユ竿・カレイ竿など)とその製作工程を、約300点の資料で紹介する特別展「釣りの文化と技術」が、仙台市歴史民俗資料館(仙台市宮城野区)で開かれている。
「2、3歳の子供でも釣り遊びをします。人間の奥深い嗜好(しこう)性からくるもの」と畑井洋樹学芸員。江戸時代から遊びの文化として成熟し、一部の武士の間では「釣り道」として嗜(たしな)まれた。戦後は、ガラス繊維を素材にしたグラスファイバーロッドや炭素繊維を素材にしたカーボンロッドが出現したが、かつての釣り竿はほぼ全てが竹製だった。
中でも仙台竿は、伊達政宗の時代から受け継がれたといわれる匠(たくみ)の技がある。宮城県産の真竹や高野竹の質のよいものだけが用いられ、200もの工程を経て完成される精巧なものだ。戦前から高度成長期時代にかけて市内には20人を超える竿職人がいた。
田村政孝氏(竿政、仙台市若林区)は最後の仙台竿の職人だ。地域に自生する古竹と、混ぜものがない本漆を主な材料とし、吹きつけ機械も用いず、軽く持ち運びに便利で何十年と使える小継ぎ釣り竿を製作。繊細な調子と、細工の緻密さ、堅牢な塗りから、関東や九州、京都、奈良からも誂(あつら)えに来るという。(市原幸彦)