NASA、金星の本格探査を三十数年ぶりに再開へ
大気組成など調査、地球に生命が誕生した理由の理解望む
米航空宇宙局(NASA)は2日、金星探査ミッション2件を採択したと発表した。距離や大きさが地球に最も近い惑星ながら、高温・高圧の過酷な環境が障害となっていた金星の本格探査が、米国では三十数年ぶりに再開することになる。
候補4件の中から採択されたのは「ダビンチ・プラス」と「ベリタス」の2件。それぞれ5億ドル(約550億円)を投じ、2028~30年の探査機打ち上げを目指す。
このうちダビンチ・プラスは、金星を覆う厚い大気に探査機を突入させ、その組成を詳しく調査。標高の高い「テセラ」と呼ばれる複雑な地形の高精度画像も撮影する。米主導による金星の大気観測は1978年以来で、NASAは「地球型惑星の生成に関するわれわれの理解を塗り替える可能性がある」と意義を強調する。
ベリタスは金星周囲の軌道を周回して、レーダーで地表の標高など観測。金星地表ほぼ全域の3D地形図を作成する。観測データは、金星でのプレート運動や火山活動の有無を判断する手掛かりになると期待されている。
NASAによる金星探査は、他の天体へ向かう途中に付近を通過したものを除くと、90~94年に金星周回軌道で活動した「マゼラン」以来。米メディアによると、NASAのネルソン長官は地球の「姉妹惑星」とも呼ばれる金星の探査を通じ「なぜ地球に生命が誕生し、太陽系の他の惑星がそうならなかったか、さらなる理解が得られることを望む」と語った。(ワシントン時事)