イスラエルは敵へ打撃を、ハマスも存在感を強調
ガザ停戦の背景、それぞれ成果をアピールし事態の収拾へ
イスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが停戦合意に達した。イスラエルは「敵への打撃」、ハマスは「パレスチナの抵抗運動としての存在感」を、それぞれ国民や住民に「成果」としてアピールできる状況になったことで、事態の収拾に動く判断を下した。
イスラエルは空爆を中心とする今回の作戦で「長期にわたる平穏をもたらし、ハマスの戦略能力を打ち砕くこと」(ガンツ国防相)を目標に掲げた。具体的にはハマス幹部らが入居するビルや住宅に攻撃を加えた上で、攻撃から逃れて潜伏するためにハマスがガザの地下に張り巡らせたトンネル網も破壊。指揮命令系統の無力化を図った。
イスラエル軍はその一環として、15日には米AP通信など海外メディアの支局が入るビルについても「ハマスの情報部門の軍事関連物資があった」として空爆し、全壊させた。事前に入居者の退去を促したとはいえ、ハマス以外に被害が出ることもいとわない徹底的な攻撃で断固たる姿勢を内外に示した。
ネタニヤフ首相は「(ハマスを)何年分も後退させたことに疑いはない」と強調している。
一方のハマスは、イスラム教聖地があるエルサレムで4月中旬以降、イスラエル警官隊とパレスチナ住民の衝突が続いていたことを踏まえ、「エルサレムの聖地保護」を交戦の目的に挙げた。
警官隊が聖地のモスクに突入し、イスラム教徒に衝撃を与えたエルサレムでの衝突をめぐっては、イスラエル国内のアラブ系市民や占領地ヨルダン川西岸のパレスチナ人も大規模な抗議行動を展開。ハマスの最高指導者ハニヤ氏は、こうした動きを「パレスチナ人が(イスラエルの支配からの)自由を求める結束した闘争」と称賛した。
ハマスの政敵で、西岸の自治区を統治するアッバス自治政府議長がエルサレム問題について何ら行動を取れない中、ハマスはパレスチナ人社会で存在感を示した。一方、交戦が続けばさらなる打撃を受けるのは避けられないという差し迫った事情もあり、停戦に応じたとみられる。(イスタンブール時事)