同性パートナー制度の拡大 危機に瀕する一夫一婦制
《 記 者 の 視 点 》
東京都渋谷区が日本で初めて同性カップルを「結婚に相当する関係」と認定する「パートナーシップ制度」を導入したのは2015年10月。あれから丸4年、同じような制度は県レベルの茨城県を含め26自治体に広がっている。
男性と女性のカップルが結婚し、子供を生み育て、その子供がまた結婚するというサイクルが繰り返されることで社会は維持・発展する。だから、わが国は一夫一婦制度を採用しているのであり、婚姻制度としてこれ以上の制度はない。
そのことについては、民法の専門家が「婚姻は単なる男女の性関係ではなく、男女の共同体として、その間に生まれた子の保護・育成、分業的共同生活の維持などの機能をもち、家族の中核を形成する」(佐藤隆夫『現代家族法Ⅰ』)と明確に指摘している。また、「民法は、婚姻の当事者は性別を異にすることを前提としている。同性では、子どもが生まれないので、同性カップルの共同生活は婚姻とはいえない」(大村敦志『家族法』第3版)という見方が通説である。
安倍晋三首相は「現行憲法下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」(15年2月18日の参院本会議)と述べたのはこのためだった。平たく言えば、子供が生まれる可能性がある男女の関係と、生物学的に子供の誕生を想定できない同性カップルの関係はまったく違うということだ。
となれば、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認定することは無理筋の話となるが、その批判をかわすため、パートナー制度は、法的拘束力がなく婚姻制度とはまったくの別の制度だから矛盾しないというのが、渋谷区の説明だった。
ところが、9月18日、女性の同性パートナー関係が破綻したのは、相手の不貞行為のためだとして、原告が慰謝料などの損害賠償を求めた訴訟で、宇都宮地裁真岡支部は2人の関係を「男女間の婚姻と同視できる」として、相手の不貞行為を認め、110万円の支払いを命じる判決を下した。
つまり、同性カップルも、男女とは多少の差はあるが「事実婚」と同様に見るべきだというのだ。
この裁判官は、価値観や生活形態が多様化する中では、「婚姻を男女に限る必然性があるとは断じがたい状況にある」とした上で、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」とする憲法24条について、制定時には同性婚が想定外だったのであって「同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」と通説を覆した。現状では、専門家の多数意見ではないにしても、司法が初めて、憲法は同性婚を禁じていないという判断を下したことは、わが国の婚姻制度が危機に瀕していることの表れと見るべきだろう。
渋谷区のパートナーシップ制度導入からこれまでの動きを見ると、同制度を拡大することによって、同性婚を実現させるという推進派の思惑通りに進んでいるとの印象を受けるが、その一方で、憲法に「両性」とあるから、日本では憲法を改正しない限り、同性婚は実現しないとのんきに構える一夫一婦制堅持派の危機感のなさに愕然(がくぜん)とする。
社会部長 森田 清策