野党の「同性婚」公約 有権者白ける「解釈改憲」
《 記 者 の 視 点 》
今回の参議院選挙で、各党は「LGBT」(性的少数者)に関する公約を掲げている。自民党は「広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の速やかな制定を実現」とうたい、公明党も「理解増進法(仮称)の制定」を目指すとしている。
一方、野党側では、立憲民主党が「差別解消法を制定し、同性婚を可能とする法改正を実現します」とし、日本共産党と社民党も同様に、同法の制定と同性婚の実現を目指すことを公約に挙げている。
LGBT活動家たちは、男女のカップルに結婚する権利があるのに、同性カップルにそれがないのは「差別だ」と訴えているのだから、差別解消が同性婚に行き着くのは当然のことだが、それを公約に掲げたことで、LGBT問題に対する野党3党の姿勢が鮮明となった格好だ。
LGBT問題に対する与野党の違いは明確で、現行の婚姻(一夫一婦)制度を変えるのか、どうかに尽きるが、これは重大争点である。自民党は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」と規定する憲法24条は、同性カップルの婚姻を想定しておらず、「同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、わが国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要する」(平成27年2月、参議院本会議での安倍晋三首相の答弁)と、同性婚の法制化には憲法改正が必要という立場だ。
一方、野党側は憲法にある「両性の合意」という文言は、個人の意思尊重を明確にしただけであって、同性婚を否定したものでない、と主張する。「同性婚のために憲法改正を」とは、口が裂けても言えないから、集団的自衛権論議で、野党が政府攻撃の論法として使った「解釈改憲」を、今度は同性婚の制度化で、自分たちがやろうというのだ。これでは有権者が白けようというもの。
与党側の公約にしても、有権者には分かりにくい。「理解増進」とは何を意味するのか、曖昧なだけでなく、それを推進する議員でさえも、理解不足ではないかとさえ思える部分がある。
例えば、自民党の性的指向・性同一性に関する特命委員会はLGBTに関する「Q&A」(令和元年版)を作成している。その中で「『間違っていること』『治療すべきこと』『許されないこと』といった誤解がはびこっており」としているが、この内容からは、LGBTの当事者であることと、当事者がどのような性行動を取るのかを混同していることがうかがえる。
当事者であることには理解が必要だが、その性行動の是非については、個人の価値観・倫理観に委ねられるべきであって、それを「誤解」と決め付けるのは、それこそ偏見であろう。1人で何人とも関係を結ぶ当事者もいれば、同時並行して複数の人と関係する「ポリアモリー」もいる。その性行動にまで理解を示せというのなら、理解増進法の制定は一夫一婦を支える倫理観の崩壊と、将来の同性・複数婚を含意したもので、極めて危険である。
社会部長 森田 清策