「パートナーシップ」の拡大 性愛のパンドラの箱を開ける
《 記 者 の 視 点 》
東京都足立区が来年度から、同性カップルを区として公認する「パートナーシップ制度」を導入すると発表した。また、兵庫県明石市は、同性同士を含めた未婚のカップルを「婚姻相当」と公認するとともに、その子供との親子関係も認める「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を来年1月から導入するという。
前者の場合、今年9月の区議会で、自民党の区議がレズビアンやゲイが増えたら「足立区が滅びる」などとした発言に対して批判が殺到。結局、10月20日の本会議で「差別的と受け取られる発言があった」と謝罪し、発言を撤回するという経緯があった。
この区議は、学校教育について「普通の結婚をして、普通に子供を産んで、普通に子供を育てることがいかに人間にとって大切なことであるか」(本会議で「普通」の部分を取り消した)と、評価できる発言も行っているが、「足立区が滅びる」というのは、明らかに不用意。
現在のLGBT(性的少数者)運動についての勉強不足から出た発言が、結果的にパートナーシップ制度の導入を後押しする形となったのだろう。LGBT問題については、批判するなら正しく批判し、その理由を論理的に説明することの重要性を示した例と言える。
一方、パートナーシップ制度は既に全国で60以上の自治体が導入している。その中で、同性カップルだけでなくいわゆる事実婚の男女カップルも公認する自治体はあるが、明石市のように子供との関係や、同性の友人同士にも広げた制度は全国で初めて。公認されたカップルなどは市営住宅に入居できるなど「家族」に準じた処遇を受ける。
筆者は、東京都渋谷区が2015年、パートナーシップ制度を全国で初めて導入した当初から、いずれ性愛関係のない同性同士でも「兄弟同然の関係にあるのだから、家族と認めてほしい」という主張が出ると予想していたが、現実にそうなりつつある。
「普通の結婚」と発言した足立区の区議が「普通の」の部分を取り消したことや、明石市の制度を見れば分かるように、地方自治体に対して同性カップルの「公認」を求めるLGBT運動は、伝統的な結婚や家族の概念を大きく変質させるもので、その行き着く先は性愛関係の解放とともに家族の解体だ。
こうしたパートナーシップ制度が国の婚姻制度と矛盾することは、日本が一夫一妻制を採用している目的を考えれば明らかだ。現在の婚姻制度は、人間の性関係を一組の男女に安定させることで、弱い立場の子供を守る役割を果たしている。ひいては、それが社会の発展につながるからだ。
一方、同性カップルを「夫婦」に準ずる関係と認めるパートナーシップ制度は性愛のパンドラの箱を開けてしまい、さまざまな性愛関係の社会的公認に向けた第一歩になるであろう。「一人一人のニーズ、想定する家族像に寄り添いたい」(毎日新聞12月11日付)」との泉房穂・明石市長の言葉は、オブラートに包みながらも伝統的な家族の解体を意味する。パートナーシップ制度を推進あるいは容認する地方議員や導入する首長もその運動に加担しているのである。
社会部長 森田 清策