コロナ対策の中間成績 国民に届かなかった政治の力

《 記 者 の 視 点 》

 世界的な新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の国家的危機に直面する中で、選挙や国会内外での権力闘争とは違って「国家の意思を創造決定し、その実現に最高の指導を与える」という、本来的な意味での政治がいつになく身近に感じられるようになった。

 外国からの入国制限に加え、政府が発した全国規模のイベント自粛、小中高校の臨時休校、時差出勤・在宅勤務、不要不急の外出自粛などの要請、緊急事態宣言と各業種にわたる休業要請と支援、現金給付、緊急宣言や休業要請などの段階的な解除と新しい生活様式の要請、補正予算…。これらの全てがわれわれの生活に直結している。

 感染防止対策を求める専門家と経済再生策を求める専門家の調整をはじめ、互いに衝突するさまざまな意見や要望を調整し、国民生活、世論、感染状況、経済状況などを見ながら、国と国民にとって最良の選択肢を決定し、その実現に向けて行政機関をフル活動させ、国民を動員していく。それができるのは政治だけだ。

 そのような前提に立って、緊急事態宣言によって感染爆発と医療崩壊を食い止め、コロナ禍の第1波が収束局面に入った現時点での、安倍政権の成績を見よう。

 22日午後6時半現在の感染状況(米ジョンズホプキンス大の統計)で、世界の感染者総数は512万2千人、死亡者数は33万3千人(千人以下切り捨て)。国別では米国が感染者(157・7万人)、死亡者(9・4万人、以下、万人を省略)共に群を抜いている。感染者数では米国にロシア、ブラジルが続き、英国(25・2)、スペイン、イタリア(22・8)、フランス(18・1)、ドイツ(17・9)と欧州諸国が並び、カナダが14番目(8・2)、日本は1万6千人で38番目だ。

 死者数でも米国に続き、英国(3・6)、イタリア(3・2)、フランス(2・8)、スペイン、ブラジルまで2万人を超え、ドイツ(0・8)8番目、カナダ(0・6)11番目だが、日本は777人で28番目だ。

 このように日本は、感染者数、死者数共に他のG7国家と比べケタ違いの成績を残しているが、安倍政権の評価は上がっていない。感染を判定するPCR検査数が少ないためとの批判もあるが、死者数を見るとそれも妥当とは言えない。反安倍情緒が強いマスコミのためとの見方もあるが、これは半分、言い訳だ。

 政府の動きが国民生活に直結する状況で評価が上がらないとすれば、それは国民に政治の力が十分伝わっていないためだ。マスク、消毒液、PCR検査、給付金、家賃補助など、政治力を発揮できる場面は何度もあったが、その都度、政府の対策が国民に届くまで2、3カ月もかかった。官邸の調整力不足は明らかで、国民が政府は何をしているのかと不満を持つのは当然だ。

 コロナ禍は治療薬やワクチンが整うまで常に感染爆発の危険が残る。基本的な感染予防態勢を維持しながら経済を再生させ、第2波への備えを固める新たな局面の中で、政府はもう一度国民のために奮闘努力しなければならないようだ。

 政治部長 武田 滋樹