遅い政府の新型コロナ対策 決断力・実行力ある指導者出現を

《 記 者 の 視 点 》

 古来、悪い医者は人を殺す、普通の医者は人の命を救う、良い医者は国を憂い、国を救う、と言われる。良い医者を超えた、本物の医者の出現を待望する。本紙22日付1面の「特報」で書いた「抗体検査キット『Wondfo』 対コロナ『補完武器』に」の記事に登場していただいたエミーナジョイクリニック銀座の伊東エミナ理事長は、こうした本物の医師の一人であろう。

 理事長は、来院者から「感染していなければ、うつされることが心配だし、感染していれば、他人にうつしてしまうことが心配」ということをよく聞くという。軽症から急激に症状が悪化するケースもある“見えない敵”と、外出自粛、手洗い、「密閉・密集・密接」の3密回避など、消極的武器で戦う来院者に、安心してもらうためにも、簡単で患者の負担も少なく、たった15分と短時間で感染の有無を判断できる「抗体検査キット『Wondfo』」の検査は欠かせないという。

 いろいろ事情はあるだろうが、政府の新型コロナウイルス対策が補償問題を含め、あまりにも対応が遅い。「国民一丸となって」とうたいながら、2万件を目指すというPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査も、2千件余りしか実施されていない。最近になって医師会がPCR検査の拠点を設けたり、発熱外来を新たに設置したり、民間企業がウイルスチェックのキットを発売するという動きが出てきたが、医療現場が望んでいる検査数とあまりにも懸け離れている。

 米ニューヨーク州が1日2000人を無作為に選んだ全米最大規模での抗体検査を20日から始めた。経済活動を開始する時期を統計的に算出する目的だというが、抗体検査はこうした目的でも使用できる。日本では厚生労働省が月内にも新型コロナの抗体検査を数千人対象に検査を始めるというが、もっと早く始動できないのだろうか。欧米の医療現場では、抗体が「ある・なし」で職場の配置が変わってくるという。

 3年ほど前の秋に医療都民講座で「インフルエンザとパンデミック」という講演があった。20世紀のパンデミックとして1918年から20年に発生した「スペインかぜ」、57年に中国東部で発生した「アジアかぜ」、68年に香港で発生した「香港かぜ」、2009年から10年にメキシコから発生した「新型インフルエンザ」を例に挙げ、軍隊などの集団行動、鉄道など多人数を遠距離に運ぶ輸送手段が発展したことがパンデミックの元凶になったと聞いた。緊急事態が生じた場合、医学・安全保障の専門家会議を招集し、その機構・組織も形作られているという話だった。

 緊急事態の時、国家の指導者がどれだけ、実行力を発揮しているのだろうか。良きリーダーの条件として、教養・知識・知恵の裏打ちも必要だが、物事に対する「先見性・予知力」「俯瞰(ふかん)力」「決断力」「説得力」「行動力」が必要だとされている。細かいことを言えば、もっとあるだろうが、政界を見渡してもこういった要件を満たしている政治家は少ないように思われる、と先輩ジャーナリストが嘆いていた。

 教育部長 太田 和宏