「同性婚」の歪んだ論理 子供の福祉を無視し危険

《 記 者 の 視 点 》

 御代(みよ)替わりの令和元年は残りわずかとなったが、振り返ると、わが国の社会を支えている家族制度を破壊させる動きが活発化した一年だった。2月に「同性婚」を認めないのは憲法に反するとして、同性カップル13組が一斉提訴したのを皮切りに、6月には立憲民主、共産、社民の野党3党が同性婚実現のための婚姻平等法案を衆議院に提出した。

 7月の参議院選挙で、国民民主党を除く野党各党が同性婚を公約に掲げたことも記憶に新しい。9月には、同性カップルを男女の「事実婚」に準じる関係とする地裁判決も出た。

 こうした同性婚をめぐる動きの背景を探ると、婚姻制度に対する浅薄とも的外れとも受け取れる歪曲(わいきょく)した理解がかなり広がっていることが分かる。それを露呈させた国会議員たちの発言を先月、数多く聞いた。

 同性婚の実現を求めるイベント(主催・一般社団法人「Marriage For All Japan―結婚の自由をすべての人に」)が衆議院第2議員会館で開かれた。国会議員33人が文書でメッセージを寄せ、また実際に会場に駆け付けスピーチする議員もいたが、その内容は、婚姻制度に対する同性婚推進派の代表的な見解だった。

 日本維新の会の串田誠一氏(衆議院)は「憲法第24条には『婚姻は、両性の合意に基づいて』と書いてある。これは当事者の合意だけでは婚姻できなかった(封建的な)時代に対して、憲法が(婚姻は)自由であることを示しただけ」と強調。

 日本共産党の山添拓氏(参議院)も「憲法24条で言われているのは、一人ひとりの婚姻の自由をどう保障するかだ」と訴えた。

 このほか、マイクを握った国会議員たちは次から次へと憲法は同性婚は禁じていないと主張した。文書メッセージの中には「恋愛は自由です!」「全ての人に自由を!」という筋違いのものもあって、「これでも国会議員か」と唖然(あぜん)としてしまった。

 それはさておき、前述のような発言を見ると、同性婚支持者は、結婚を単なる二人の愛情・性関係だと考えていることがはっきりする。しかし、民法の専門家は「男女の共同体として、その間に生まれた子の保護・育成、分業的共同生活の維持などの機能をもち、家族の中核を形成する」(佐藤隆夫『現代家族法Ⅰ』)と指摘している。つまり、子供を生み育てることを前提にしているのが婚姻制度であり、正統な結婚観からすれば自然には子供が生まれない同性カップルの関係は「結婚」ではないし、「家族の中核」を破壊することになるから、社会にとっては非常に危険である。

 そんなことは意に介さず、「結婚制度は子どもを産み育てるため!?そんな永田町の非常識をひっくり返し」と、扇動する文書メッセージをイベントに寄せたのは、立憲民主党の山尾志桜里氏(衆議院)。同性婚の合法化とは、結婚観を子供の福祉重視から当事者中心にひっくり返す「革命」なのである。

 社会部長 森田 清策