米保守主義運動の「輸入」 日本再生のヒント見いだせ
《 記 者 の 視 点 》
トランプ米大統領の下で盛り上がる米国の保守主義運動を、日本に「輸入」しようとする動きが起きている。
米国で毎年開かれる「保守政治行動会議(CPAC)」は、全米の活動家が一堂に会する保守派最大の集会だが、日本でも2017年から、その日本版である「J―CPAC」が開催されるようになった。CPAC主催団体の「全米保守連合(ACU)」が全面協力し、これまでにトランプ氏の側近だったスティーブン・バノン元大統領首席戦略官ら大物が講演している。CPACは日本以外に豪州、ブラジル、韓国でも開催されている。
また、トランプ政権に近い有力保守派団体「全米税制改革協議会」も、日本の保守派と共に「日米イノベーション・サミット」と題する会議を3年連続で開いている。
日米の保守派の連携強化が進んでいることは歓迎すべき潮流であり、日本にとって大きな意義が幾つかあるように思う。
一つは、中国の脅威に共同で対抗することだ。米国では対中警戒感が党派を超えて広がっているが、保守派ほどその傾向が強い。ACUのマット・シュラップ会長は先月、ネットトーク番組で「米国の保守派は常に共産主義と戦ってきた」と述べ、これが中国の脅威に直面するアジアでCPACが広がっている要因だとの見方を示した。中国の覇権の野望を阻むには、明確な反共思想を持つ米国の保守派と連携していくことが今後一段と重要になるだろう。
二つ目は、日本が長期的な低迷から脱却するヒントを見つけることだ。米国の保守主義運動が目指す最も重要なゴールの一つは、政府が国民生活に積極介入する「大きな政府」に歯止めをかけ、民間活力と自助努力を重視する「小さな政府」を実現することである。そのために米国の保守派が常に主張するのが減税だが、日本の政界では減税で小さな政府を目指すべきだという議論があまりに少ない。
先月来日し、本紙のインタビューに応じた全米税制改革協議会のグローバー・ノーキスト議長は、トランプ氏が減税と規制緩和で米経済を復活させたことを高く評価する一方、消費税を引き上げた日本に対しては「増税は経済成長を妨げる。必要なのは経済成長であり、増税は問題解決にならない。少子化を悪化させるだけだ」と言い切ったのだった。日本社会に民間活力を取り戻すには、小さな政府の議論は絶対に欠かせず、米国の保守主義運動から学ぶべきことはたくさんある。
さらに、前述のシュラップ氏が世界の保守派が協力して取り組むべき分野として挙げたのが、教育だった。「米国では7、8歳の子供にクレージーなジェンダー思想を教えているが、これは世界の主要都市で起きていることだ」と主張。また、過激な性教育は「児童虐待だ」と痛烈に批判した。
外交・安全保障から経済・財政、さらには教育・社会問題まで、日本再生に向け、日本の保守派が米国の保守派と連携できるテーマは山のようにあるのだ。
編集委員 早川 俊行