3年ぶりの経済対策 増税に台風被害重なり大型に
《 記 者 の 視 点 》
政府が防災対策や国内景気の下支えなどを柱とする、事業規模26兆円の経済対策を閣議決定した。経済対策の策定は2016年以来3年ぶり。国・地方の支出や財政投融資を合わせたた財政措置は13・2兆円で、前回(13・5兆円)に迫る規模である。
やはり、というべきか、というのが率直な感想である。
景気対策や軽減税率を導入したとはいえ、10月からの消費税増税にはもともと懸念が少なくなった。
前回の小欄(9月13日付)では、実施まで半月に迫った増税が「景気後退の契機になる恐れ」として懸念を伝えたが、増税の悪影響は実施2カ月を過ぎた現在、案の定、顕在化してきている。経済産業省の商業統計、百貨店やスーパーの売り上げ、自動車販売などは10、11月と相当の落ち込みを示した。
これらの落ち込みが大きくなったのには、運悪く、台風などによる被害が今年は特に甚大だったからでもある。
そういう面では今回の大型の経済対策は当然の措置で、規模の大きさからは景気後退を何としても食い止めたいという強い意思を感じさせる。
対策の関連経費は19年度補正予算案と20年度当初予算案に分けて計上し、「15カ月予算」として一体的に編成する。財政措置13・2兆円のうち、国と地方の歳出は9・4兆円、国が低利で融資する財政投融資は3・8兆円である。
大型経済対策については、異論も少なくない。主な論点は三つ。一つは、国内経済は「緩やかな回復基調にある」が政府の基調判断であり、大型の対策を実施するのはおかしいというもの。二つ目は、防災対策は分かるが、他の対策はバラマキになりかねない点。三つ目は財政状況をさらに悪化させる、である。
財政状況の悪化は、法人税収が米中貿易摩擦などによる世界経済の悪化から落ち込み、19年度の国の税収が当初見込みから1兆~2兆円下振れする見通しにあり、そんな中での大型対策は赤字財政の上に赤字国債の発行という借金を重ねることになるからである。
どうだろう。政府の景気判断は発表にタイムラグがあり、景気の現状からいえば、一段の引き下げは時間の問題と言える。バラマキ懸念は確かにあり、効果などについて精査は必要だが、経済対策の要諦は速さとインパクトであり、いかに悪影響を小さく抑えるかである。
今回の対策では、懸念される東京五輪・パラリンピック後の経済活力維持という意味もある。精査に求められる観点はこれであろう。財政事情のさらなる悪化を招くとの批判だが、これは現状でも毎年度の予算編成である程度の国債発行はやむを得ず、発行残高の対GDP(国内総生産)比を漸減させていくしかない。
逆に大型の対策を実施しなければ、どうなるか。景気後退入りし、それが長引けば、税収減は法人税にとどまらず所得税にも及ぶ。場合によっては消費税収にも影響し、税率アップ分に見合う税収が得られない可能性もある。財政論議は中長期的にみる必要がある。
経済部長 床井 明男