宜野湾市長選24日投開票 普天間移設めぐり保革が大接戦

 普天間飛行場の移設問題が最大の焦点となっている宜野湾市長選が17日に告示され、24日に投開票される。自民党県連と公明党県本部が推薦する現職、佐喜真淳氏(51)と共産党など翁長雄志知事を支える革新政党・団体が支援する新人の元県職員、志村恵一郎氏(63)の一騎打ちになる。複数の世論調査によると、ほとんど差がついていない大接戦の情勢だ。「運動を緩めた方が負ける」と両陣営は激しい運動を展開している。(那覇支局・豊田 剛)

4年間の実績アピール 佐喜真氏

翁長知事先頭に総動員 志村氏

普天間飛行場の移設問題をめぐり保革が大接戦

佐喜真淳・宜野湾市長

普天間飛行場の移設問題をめぐり保革が大接戦

志村恵一郎氏

 沖縄県の2016年の選挙イヤーのトップを飾る宜野湾市長選。

 日米両政府が返還合意してから今年4月で20年になる。2013年末に仲井真弘多前知事が移設先の名護市辺野古沖の公有水面埋立を承認し、ようやく移設・返還に道筋がついた。ところが、一昨年の知事選で辺野古移設阻止を公約に掲げて当選した革新系の翁長雄志知事は昨年、承認を取り消した。

 国防は政府の専管事項であり、知事には決定権はない。それでも、名護市長選、14年末の衆院選挙の小選挙区では移設に反対する候補が勝利していることから、辺野古移設反対が民意と翁長氏は主張。県内メディアの援護射撃もあり、移設反対の声は高まるばかりだ。

 こうした中、宜野湾市長選は普天間飛行場の移設に対する民意を問う重要な選挙として位置付けられており、国政が大きく注目している。普天間飛行場の移設に関わる県、名護市に宜野湾市も“反対”に回れば、辺野古移設に影響しかねない。

 衆院予算委員会では12日、民主党の議員が市長選の結果が移設計画に影響する可能性をただすと、安倍晋三首相は「安全保障に関わることは国全体で決める。一地域の選挙で決定するものではない」と強調した。それでも、政府にとって移設作業をスムーズに行うためには宜野湾での勝利は不可欠だ。

 自民党の茂木敏充選対委員長は昨年末から3回宜野湾市入りし、返還後の振興策に対する理解を示した上で、挙党体制で応援することを誓った。知事選では自主投票だった公明党は佐喜真氏を推薦。組織挙げての応援体制に入っている。

 佐喜真氏は1期4年間で大きな実績を上げた。税収を上げ、防衛費を増額させた。給食費の半額助成、小学生までの医療費免除など教育福祉を拡充。また、米軍施設がある西普天間地区の返還など、4年前まで36年続いた革新市政では成し得なかったことをわずか1期で成し遂げた。

 また、普天間飛行場の一部の先行返還により、慢性的な国道の渋滞緩和が期待される。公約の目玉として、西普天間住宅地区に隣接するインダストリアル・コリドー南側部分の返還跡地にディズニーリゾートを誘致する計画を打ち立てている。水面下で、ディズニーを運営するオリエンタルランドとの交渉も進められており、リゾートホテルを皮切りに将来的には施設の拡大を視野に入れている。

 佐喜真氏が当選するまでの27年間は革新市政だったことを鑑みると、「革新の力は侮れない。あくまでも挑戦者の精神を忘れない」と選対幹部は気持ちを引き締め、現職としての強みはないものとみなして戦うと言う。

 一方、志村氏の陣営は告示1カ月以上も前から多くの街宣カーを動員させ、市内各地で街宣活動を行っている。運動員の数で圧倒する。志村陣営にとって、保守の切り崩しとともに反政府と翁長知事派の票をどれだけ確保できるかが鍵となる。

 宜野湾市における知事選の得票数を見れば、翁長氏が仲井真弘多氏を大きくリード。その後の衆院選でも沖縄2区では社民党の照屋寛徳氏が自民党・宮崎政久氏のダブルスコアに近い票を獲得した。

 これらのデータから、保守色の強い志村氏を革新候補として擁立すれば楽勝できるという公算だった。元県議会議長の自民党出身の父を持ち、本人は建設関係の人脈があることから、保守系の切り崩しは容易とみられていた。

 「あらゆる手段を使っても勝つ」「何が何でも勝たなければならない」と決意する翁長氏は、今月に入ってから平日にもかかわらず公務を一切入れない日が続いた。その間、鉢巻きを巻いて街頭に立ち、市内の企業・団体を回って支持を訴えた。翁長氏を前面に立てて支持拡大を狙う戦略だ。

 そのため、志村陣営の演説は、「“辺野古新基地”建設に反対します」「安倍政権にノーを」「翁長知事と共に」というフレーズが多用されている。一方で、市政運営やまちづくりに対する言及はほとんどない。

 共産党主導のイメージを払拭(ふっしょく)するため、イメージカラーは赤ではなく、翁長氏の知事選と同じ緑色。共産党系の選挙カーやチラシでも革新色を極力、排除する工夫をしている。こうした運動が無党派層にどれだけ響くかポイントとなりそうだ。

 有権者数は7万3593人(16日時点)。前回4年前の選挙では、わずか900票差で、自公が推薦の新人として出馬した佐喜真氏が、下馬評で優位とみられていた革新系の伊波洋一氏(元市長)を破った。