中国の動向、民族の生存拡大が戦略
安保情勢と普天間移設
沖縄の米軍問題を考える会代表 松谷秀夫(上)

まつや・ひでお 昭和19年群馬県生まれ。日本テレビ技術専門学校(現・東京工科大学)卒。平成5年から24年6月まで宜野湾市観光振興協会会長。現在は同会顧問、学校法人SOLA沖縄学園監事、普天間日米友好協会会長など。
中国は最近、南シナ海、南沙諸島(スプラトリー)に滑走路を、さらに中沙諸島および西沙諸島に漁村と称して軍事施設を建設(3000㍍級滑走路3本、レーダー施設、地上建築物、港湾施設)、多数の漁船を集結させそれを警備するとして海洋警察を派遣、三沙市なる行政組織を作り埋め立てた島々の外縁12カイリを領海として、事実上の実効支配を開始した。
この海域はフィリピン、ベトナム、台湾、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイなどが領有権を主張している。フィリピンには以前米軍基地があったが、住民の反対運動や火山の噴火などで撤退、事実上無防備の状態だった。最近になってフィリピンは新たな米比防衛協定の締結を決議し米国に対して米軍の再駐留を求めている。
この海域には豊富な天然ガスや石油が埋蔵されていることが国連機関によって確認されている。これに対して中国は一方的に領有権を宣言し海上に天然ガスや石油掘削のプラント、軍事施設まで建設、覇権拡張主義を断行し国際的な批判を浴びている。さらに東シナ海でも日中中間線に沿ってガス田の開発を進め、現在確認されているプラントは7施設あり既に操業を開始(2015年10月17日現在)、またわが国の領有する尖閣諸島を含む空域を中国の防空識別圏として宣言した。
日米同盟の関係を考慮しているのか一度は中国人の不法上陸はあったが(日本側によって逮捕)、南シナ海のような強硬手段は取らず今のところ中国海洋警察船の領海侵犯、自衛隊機への中国機異常接近、海保巡視船に照準管制レーダー照射などで日米の対応を見定めようとしている。沖縄本島久米島沖においては中国海洋局調査船による海底地形のデータ取得とみられる接続水域および領海内での無通告不法航行が増加している。さらに中国海軍北海軍区に所属すると思われる潜水艦が接続水域で頻繁に航行、領海内では夜間浮上することもあり自衛隊、米軍がスクランブル発進を繰り返しているのが実情だ。
尖閣諸島の領有権を主張する中国の思惑は、海底資源の獲得といわれているがそれだけではない。国力と軍事力の増大に応じて中華民族の生存発展を拡大していくという壮大な海洋戦略(中国提案太平洋米中2分割構想)があるのだ。尖閣諸島を自分のものにできれば太平洋に出るルートも確保しやすい。
国際法によれば該当する地域の実行支配を50年間続けていけば、慣例として領有権を認めるとしているが、これらも該当国以外の反対がない場合に限るとされている。こうした問題は国際仲裁司法裁判所(本部オランダのハーグ)に関係国の訴えで判断される。沖縄の帰属に関して中国はさまざまな理由をつけてきているが、一つには米国から施政権が返還されて間もなく50年を迎えるためだとも言われている。つまり2国間問題に持ち込む思惑が見えてくるが、これはいささか乱暴な論理で到底受け入られる事ではない。こうした中国による東シナ海の軍事的な動きを日本はもちろん沖縄の米軍が無視できないのは当然である。