在沖米軍キャンプ・ハンセン、海兵隊員が人命救助で受章

自転車転落の高齢男性を介抱

 在沖海兵隊のジェイコブ・バウマン三等軍曹(25)が今月14日、沖縄の高齢男性を救助した功績により、米軍から功労勲章を受章した。昨年末、男性が自転車から転落した現場に遭遇したバウマン氏が救助活動をしていたところに、たまたま通りかかった自衛隊員が補助するという日米のチームワークが奏功し、男性は一命を取り留めた。「良き隣人」を自任し地域との交流を重視する米軍人による数多くの人命救助のひとつだが、地元メディアは米軍人の善行に対して報道をせず、沈黙を続けている。(那覇支局・豊田 剛)

海軍衛生兵、陸自隊員も補助

地元メディアは黙殺

海兵隊員が人命救助で受章

(左から)第3海兵師団司令官のステイシー・クラーディー少将、ジェイコブ・バウマン軍曹、エリカ夫人、第12海兵連隊指揮官のランス・マクダニエル大佐

 キャンプ・ハンセン(金武町(きんちょう))内の第12海兵連隊司令部前で開かれた勲章授与式では、同連隊の指揮官であるランス・マクダニエル大佐が勲章をバウマン軍曹の制服の胸に取り付けた。バウマン軍曹は、在沖米海兵隊・第三海兵遠征軍(3MEF)傘下の第3海兵師団の中の第12海兵連隊に属する。

 授与式でマクダニエル大佐は「ヒーローや勇気は歴史や神話などで見聞きするのではなく、実際の生活において必要なものである。英雄的行為とは普通の人が他の人のために並々ならぬことをすることである」と述べ、バウマン軍曹の利他的かつ献身的な行動を称賛した。

 バウマン軍曹の取った行動は以下の通りだ。

 ある高齢の男性が昨年12月23日、沖縄本島北部の金武町の国道で自転車から転落。前を走った車両が次々と現場を避けて運転する中、バウマン軍曹は車から降りて、男性を安全な場所へ移動して蘇生させた。

 男性の鼻近くに耳を近づけて呼吸を確認し、次に胸部が上下に動いているかを観察。男性の心拍が不規則であることに気づくと胸骨圧迫を始めた。

 バウマン軍曹は心肺蘇生法の講習を受講し認定を受けており、「海兵隊のプログラムの一環として戦闘救助訓練を受けていたことが役立った」という。

海兵隊員が人命救助で受章

岩崎俊樹曹長

 蘇生中に、車で通りかかった米海軍所属の衛生兵2人が救助に加わった。さらに、第三海兵遠征軍と自衛隊との連絡員としてキャンプ・ハンセンに駐留する陸上自衛隊の岩崎俊樹曹長も車を止め、救護活動を手伝った。

 岩崎曹長は、「老人が多量に飲酒していたことは明らかであった。強い酒の臭いがし、泡盛の空瓶がそばに転がっていた。男性が食べ物や飲み物を要求すると、海兵隊員は自分の水や弁当を分け与えようとしているのを目にして感動し、胸を打たれました。海兵隊員と衛生兵は素晴らしく、彼らに感謝しています」と当時を振り返る。

 授章式後、バウマン軍曹は本紙とのインタビューで、「困っている人々を助けることに喜びを感じます。私は誰もがすべき当たり前の行動として彼を助けただけです」と語った。地元住民についても「キャンプ・ハンセンと金武町が友好な関係にあることから、地元住民は『良き隣人』であり、決して他人とは考えていません」と述べた。

 また、自衛隊との関係については「自衛隊は最高の同盟パートナーとして尊敬しています。海兵隊と自衛隊は日頃から共同訓練を通じて信頼関係を構築しています」と岩崎曹長との連係プレーが奏功したことを喜んだ。

 岩崎曹長も、「米軍人による地元民への日常の救援活動エピソードは、地元メディアで取り上げられることはまったくと言っていいほど無いが、純粋に美しく心温まるものであり、(海兵隊の)モットーである『世界一の友』をさらに強調するものだと思います。私も救助に参加できたことを光栄に思い、また共同救助活動の目撃者となれたことを特にうれしく思います」と手記で述べている。

 2012年には普天間航空基地隊員のエリック・ハンセン伍長がレストランで食べ物をのどに詰まらせた高齢の女性を救助したことがある。昨年2月にも交通事故現場で応急手当てをすることで一命を取り留めた事例が2件あり、4人の海兵隊員が救助に携わった。しかし、地元メディアはこうした米軍人の善行についてほとんど報道していない。

 在沖海兵隊政務外交部のロバート・エルドリッジ次長は、地元メディアの報道姿勢について「地元メディアは、米軍の善行を報道しないため、実際に存在している良好な日米関係を表現できない。多くの事実や良い出来事を報道しないで、否定的で扇動的なめったに起こり得ないことに焦点を当てている」と批判した。