沖縄県、「健康長寿復活プラン」で1位奪還へ

宜野湾市で第2回「平均寿命サミット」

子供の時期から栄養指導・生活習慣病健診の徹底を

 日本の平均寿命は県別では、全国1位が長野県、最下位が青森県、かつて1位で男女ともに凋落傾向にある沖縄県。平均寿命の延伸対策について考える「第2回平均寿命サミット」(主催・沖縄県、沖縄県医師会、琉球大学医学部)が17日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開催され、沖縄、長野、青森3県の学術・行政・医療関係者ら約300人が参加した。「食習慣や食環境の改善」をテーマに、各県の食習慣や改善点などを議論した。中でも、全国一の肥満県の沖縄県では、「生活習慣病を防ぐためには子供の時期から対策を講じなければ手遅れになる」という危機感が漂っている。(那覇支局・豊田 剛)

1位の長野県、健康指導者育成が進む

最下位青森県、食生活改善へ意識改革

「健康長寿復活プラン」で1位奪還へ

第2回「平均寿命サミット」では「食」をテーマに長野、青森、沖縄3県の代表が食生活の課題や取り組みについて報告した=17日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター会議棟

 「平均寿命サミット」は昨年10月、青森市で第1回が開かれ、青森、長野、沖縄3県の行政・医療関係者が一堂に会した。長野県からは女性の5人に1人が健康補導員を経験するなど健康リーダー育成が進んでいるという報告があった。また、「勉強好きで議論好きで酒の場でも健康管理を語る」という長野県に比べ、「なんくるないさー」(なんとかなる)が口癖で、男性が家に引きこもる傾向のある沖縄県は「健康教養が低い」ことが問題視された。

 第2回となる今回のテーマは食事。主催者を代表して琉球大学医学部長の松下重之教授があいさつ。「健康長寿は社会インフラ、教育、食事などさまざまな要因を含む。それぞれが負に陥ると戻すのが大変で多方面での努力が必要になる」と述べた。

 続いて、沖縄県保健医療部健康長寿課の糸数公課長が、「健康長寿復活への取り組み」を報告。平均寿命が全国30位に転落した沖縄県の男性は、30代から60代の年齢調整死亡率が高く、「このままでは20年後には女性は平均グループ、男性は全国最下位グループになる可能性が高い」と沖縄県の現状に警鐘を鳴らした。

 沖縄県は現在、2040年までに男女ともに平均寿命1位を奪還するために、官民一体となって健康長寿復活プランを策定し、①健診受診②肥満解消③適正飲酒――を重点に幅広く県民に呼び掛けている。

 サミットでは沖縄県から久米島町健康福祉健康づくり班の平田淳子班長、青森県からむつ保健所の平紅所長、長野県からは健康栄養が専門の長野県短大の村澤初子助教が報告した。

 沖縄県の中でも生活習慣病患者の率が高い離島の久米島は、平成22年度の特定健診で20代の肥満率が5割を超えた。「20代で健診しては遅い」との危機感から、小学5年生から高校3年生を対象に平成21年度から「子ども健診」を実施。大人の健診と同様に生活習慣病である糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症がないかどうか調べている。同時に、親子を対象にした食に関する講話、小児科医による健康管理の指導も行っている。平田氏は、「生活習慣病を防ぐためには子供の時期から対策を講じなければ手遅れになる」と、大人も子供も一貫した内容で指導することの重要性を強調した。

 青森県では健康状況が最も悪いのが下北地域だ。「大皿」「大酒」「濃い味付け」という食文化などが原因で、多量飲酒率が沖縄県の2倍、さらに、肥満児は全国平均の2~3倍だという。このため、県では「ピンチをチャンスに!」を合言葉に健康まちづくり事業をスタートした。中でも、未就学児を持つ親子をターゲットにした親子料理講習会の開催や子供向けヘルシー惣菜の開発を進めている。「県職員の意識が変わることで良い雰囲気ができあがり、流れに乗りつつある」と平所長は手応えを感じている様子だった。

 これに対し、長野県は戦後間もない昭和20年代から県主導で栄養教育を実践してきた。昭和30年代に脳卒中率が全国一だったことから脳卒中と食生活の関係実態を調査。その結果が同50年代の県民減塩運動につながった。その結果、成人1日平均の食塩摂取量を5㌘下げた。食育環境の整った飲食店を「三つ星レストラン」として登録するなど、時代や食生活の変化に応じた対応で常に先手を打っている。「こうした努力の積み重ねの結果が、男女ともに平均寿命全国一位という結果につながっている」と村澤氏は分析した。

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「県民健康フェア」で講演する弘前大学医学部長の中路重之教授=17日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター展示棟

 サミットの発起人である弘前大学医学部長の中路重之教授は、「長野と青森の医療における差はなく、生活習慣と健康づくりの意識の差が問題である」と意識の違いを強調。「学校や職場で健康づくりの輪を広げてほしい」と提言、喫煙率が45年間で51ポイント減少したことを例に挙げ、「楽しくなくともしっかりとした知識があれば実践できる」と訴え、次回の長野でのサミット開催に意欲を示した。

 中路教授は同日、別の会場で開催された「県民健康フェア」(主催・沖縄県医療保険連合会)における講演では「沖縄でも長野と同様に健康リーダーの育成が急務だ」と訴えた。しかし、フェアには若年層や親子連れの姿は少なく、中高齢者の姿が目立った。「健康への関心が少ない若者が会場に足を運びたくなるような仕掛けが必要ではないか」とフェアで出展ブースを担当した女性は語っていた。