孔子廟設置で特定団体に便宜か、那覇市長と市への住民監査請求受理
身障者福祉めぐり不適切な支出も
那覇市の不透明な財政管理に関する2件の住民監査請求がこのほど監査委員会に受理され、現在審議が行われている。久米2丁目の松山公園に設置された久米至聖廟(びょう)に対して市が特別な便宜を図った疑い。もう一つは、身体障害者福祉をめぐって市の不作為により市民の税金の不必要な支出を余儀なくされたことが浮き彫りになった。いずれも、翁長雄志(おなが・たけし)市長に対して地代相当額、損害賠償を請求した。(那覇支局・豊田 剛)
土地の無償貸与、現行憲法を無視
8日午後1時半、那覇市役所内で住民監査請求の意見陳述が行われた。那覇市が久米2丁目の松山公園に建設させた社団法人久米崇聖会所有の久米至聖廟(孔子廟および明倫堂)の設置許可を停止し、撤去を求めるもので、翁長雄志市長に対して過去1年間分の地代相当の金額を請求。市が「クニンダ(久米村)のまちづくり」をすすめていることに対して疑問を呈した。
請求人である那覇市在住の金城テルさんは開口一番、「市長と久米崇聖会は緊密な関係にある。久米崇聖会が市に土地を提供したという過去の話も聞くが、市がこれに対する見返りとして至聖廟用地を無料で使わせているというのであれば、これは賄賂だ」と訴えた。
至聖廟に隣接する福州園は1992年、那覇市制施行70周年と中国福建省福州市との友好都市締結10周年を記念し造られた。開園当初は300円の入園料を徴収していたが、久米崇聖会の要請により今では無料開放している。
福州園の年間入場者は昨年約9万7000人。内訳は、台湾4万2000人で最も多く、日本人3万4000人。一方、中国人は3600人しかいない。維持管理費は年間2100万円という。福州園の隣には久米崇聖会が管理する駐車場がある。ここは車30台分の駐車場で、至聖廟設置には十分な広さがあるのに、なぜこちらを選定しなかったのか、さらに、厳しい市の財政からなぜ20億円以上も投じて至聖廟を中心とした「クニンダのまちづくり」の建設を進めているのか、疑念は尽きない。市当局は、まちづくりのマスタープランは久米崇聖会の要請によって作られたことを認めている。
「市民を代表してなぜこのようにしたのか聞きたい」。こう主張する金城さんは、「公園は親子が安心して遊べる場所であるべきだ。孔子廟は儒教の信仰の対象であり、公園にふさわしくない」と訴えた。
久米至聖廟の土地の無償貸与は4月1日、自動更新されたが、これに対する明確な説明もない。
引き続き行われた職員陳述では、関係当局である公園管理課と花とみどり課の課長らが出席し、次のように弁明した。
公園管理課の担当者によると、久米崇聖会は①一般社団法人②琉球王朝の発展に大きく貢献した団体③至聖廟は教育施設として設置され、久米村の住民に親しまれた――という観点から無償貸与は問題ないというのだ。
しかし、監査委員に宗教的意味合いの強い祈願札がなぜ売られていたのかという事実を問いただされると担当部長は「販売を即刻中止するよう(久米崇聖会に)言った」と説明。指摘されるまでは宗教的行為として祈願札が販売されていたことを認めた。
また、無償貸与の指摘については、「戦前には県の公費で孔子廟や明倫堂を造り維持管理していたことから、市のゆかりのある文化教養施設として公園内に設置を認めた」と述べ、政教分離の原則をうたう日本国憲法が戦後施行されたことを無視した説明をした。
これに先立ち、午前中には、社団法人那覇市身体障害者福祉協議会(身協)に対する補助金の不透明な支出に関する監査請求の意見陳述が行われた。
陳述内容によると、身協が那覇市から委託された那覇市障害者福祉センターの指定管理料は平成21年度から25年度までの収支予算計画書では年間819万円だったにもかかわらず、市は身協に各年度4154万円を支払ったことが議会の答弁などで浮き彫りになった。那覇市在住の60代の男性請求人は、差額の5年分1億6675万円の損害賠償を翁長雄志市長に請求するよう求めた。
また、国が定めた障害福祉サービス事業を市が実施する際、国から2分の1、県から4分の1の給付が受けられるにもかかわらず、これに必要な条例改正と身協に対する指導を怠ったために、市に不適切な支出をさせ、損害を被らせた翁長市長の責任は極めて重大だと指摘している。
男性請求人は、「議会で何度も問題提起されているにもかかわらず、これまで何の改善もなされていなかった。本来は、間違いが分かった段階で修正しなければならない」と指摘。「あえて改善しようとしないのは、剰余金を(裏金として)プールしていると疑われても仕方ない」と語気を強めた。これに対し、障がい福祉課による職員陳述はなかった。
両監査請求は3月18日に受理されており、今後は監査委員会で審議を行う。通常は、2カ月間審議を行うことになっており、5月中旬以降にも結論が出る見通しだ。
那覇市住民監査請求
住民監査請求は、那覇市民の方が、市長等執行機関の職員による公金の支出、財産の管理、契約の締結などの財務会計上の行為が違法又は不当であると認めたとき、このことを証明する書面を添えて、監査委員に対し監査を求め、必要な措置を講ずべきことを請求するもの。(根拠法=地方自治法第242条)







