中国の脅威に「台湾」明記の日米首脳共同声明を評価した「サンモニ」
◆目に余る軍事的威嚇
菅義偉首相が訪米しバイデン大統領との対面による日米首脳会談が行われた。その焦点は覇権主義的な動向が脅威となっている中国、および台湾であり、ある意味でわが国にも白黒を迫るものがある。なぜなら、中国が各国に「一つの中国」政策で白黒を迫ってきたのが台湾問題だからだ。
18日放送のTBS「サンデーモーニング」は、「風をよむ」のコーナーで「バイデン外交 まず日本から」のタイトルで日米首脳会談に焦点を当てた。日米首脳共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と「台湾」が明記されたのは、1969年、佐藤栄作首相とニクソン大統領による日米首脳会談以来52年ぶり。台湾=中華民国が国連安保理常任理事国だった時代だ。
同コーナーは、首脳会談の共同記者会見、共同声明、米上院軍事委員会公聴会で「6年以内に中国の台湾軍事侵攻があり得る」とのインド太平洋軍デービッドソン司令官の証言、台湾の防空識別圏に何度も侵入する中国軍機やわが国の尖閣諸島沖で日本の漁船を追い回す中国公船の動きなどを指摘。目に余る威嚇が繰り返されている。
日米首脳共同声明について、「精読した」という福山大学客員教授の田中秀征氏はじめ出演者からは、「台湾、香港、新疆ウイグル、ミャンマー」の人権問題への懸念など評価する反応が示された。
◆米国の本気度を問う
この中で、69年佐藤・ニクソン会談に触れた司会の関口宏氏は、「あの頃まで米国は台湾を大事にしていた。ところがあの後ガラッと態度を変えて中国の方へ行く。そのことを見てるから、米国が本気で台湾のことを考えているか心配している」と述べた。
番組にコメントされるような国際政治の脚光を台湾が浴びるのは、半世紀以上も経(た)つ。日本とは52年に日華条約を結び、国交があった。中華民国は第2次世界大戦の戦勝国だが、国民党の中華民国政府が共産党との内戦で劣勢に陥り、大陸から台湾に拠点を移してからだ。同条約は49年建国の中華人民共和国について中国大陸は「中国共産党によって不法に占領されている状態」と規定していた(中華民国は孫文が12年に南京で発足した臨時政府を起源としている)。
しかし70年代以降、中国の「一つの中国」攻勢によって台湾と断交する国が相次ぐ。米中国交正常化は71年、同年国連を台湾脱退、日中国交正常化は72年で、中国を代表する政府を中華民国(台湾)政府から中華人民共和国政府に変えて承認し、台湾とは断交した。
冷戦時代、自由主義国にとって最大の軍事的脅威だったソ連を包囲するパワーゲームだが、今や台湾は中国を味方に付けるカードではなく民主主義を守る運命共同体だ。
◆関係格上げの工夫を
評論家の大宅映子氏は、「台湾に関して共同声明は大賛成だ。親日的で後藤新平の銅像を飾ってあるところもある」と評価した。台湾は日清戦争後の下関条約で1895年から日本が統治していた。後藤新平は98年に台湾総督府民政長官に就任。その銅像が台湾の国立台湾博物館に展示されており、日本との縁を記念している。
また大宅氏は、政府高官の台湾出張が規制されていることに触れ、「そういうのを払拭できたらいいと思う」と述べた。国交を結んだ国に「一つの中国」の踏み絵を迫る中国に忖度(そんたく)し、政府は省庁局長級以上の公務員の台湾出張を禁止してきた経緯がある。
それを払拭(ふっしょく)すべきだとの大宅氏の要望は、米国ではトランプ前政権の下で超党派で制定した台湾旅行法の例がある。同法で閣僚や政府高官の相互訪問を可能にして「一つの中国」の呪縛(じゅばく)を実務的に解いたのだ。昨年、米厚生長官や米軍の将官らが訪台した。既に経済、観光、民間交流は活発な日台関係だが、関係格上げの工夫の余地もあろう。
(窪田伸雄)