共産票を頼った「野党政権」の下心見え見えの朝日の「失望の高い壁」

◆もし安保法なければ

 歴史にif(もし)はないとされるが、5年前に安倍晋三政権が野党や一部メディアの圧力に屈して安保関連法の成立を断念していれば、どうなっていただろうか。

産経28日付「安保法制5年」(29日で施行5年)の記事にこんな声が載っていた。

 高村正彦元自民党副総裁「日本の自衛艦が米空母を警護している絵が世界に発信される。これは大変な抑止力だ」

 政府高官「安保関連法がもしなかったら、トランプ前政権の時代は大変だっただろうとつくづく思う」

 北側一雄・公明党副代表「あのときやっておいて本当によかった」

 この5年、中国の「力の横暴」は目に余る。元来、沿岸警備隊だった海警局は「第2海軍」と化し、武器使用も許されて尖閣諸島周辺の領海侵入を繰り返している。だから、ifを考える。あの時、安保関連法ができていなかったら今ごろは、と。

 日米同盟の重要性はバイデン米政権下でも変わらない。むしろ日本の役割を一層求めてくるとされる。これからの時代はもっと大変だ。4月に予定される日米首脳会談で菅義偉首相はさらなる防衛力増強を迫られるだろう。だから、未来のifを考える。

◆もし「枝野首相」なら

 もし野党政権が誕生すれば、「枝野幸男首相」はどんな手土産をもって日米首脳会談に臨むのか。手ぶらか、いや刃(やいば)か。それとも真っ先に日中会談か。あるいは内にこもって何もしないか。そんなifを巡らすのは、参院長野補選の立憲民主党陣営が共産党とトンデモ協定を結んだからだ。

 それがいかなるものか、共産党長野県委員会のホームページを開いてみると一目瞭然。「原発ゼロ」だけでなく、「安保法制の廃止」「日米同盟に頼る外交姿勢の是正」、さらに防衛費削減までうたっている。日米同盟に頼らず、自主防衛も怠る。中国を喜ばせる丸裸日本というわけだ。同委は協定を「深い豊かな内容」と自画自賛している。

 立憲の枝野代表は連合会長に協定を謝罪したが、破棄しないというからifの野党政権は限りなく怪しい。鳩山民主党政権の辺野古をめぐる「最低でも県外」が招いた日米あつれきの非ではあるまい。

 これを先週23日付本欄で取り上げた(「外交・安保棚上げの『民共共闘』を目論み長野補選の政策協定隠す朝日」)。奇しくも同日付の朝日が「立憲合流半年 伸び悩む支持 原発政策 連合・共産の『板挟み』」と報じ、ようやく俎上(そじょう)に載せた。ところが、記事は原発のみを扱い、安保・外交策にはまったく触れていない。やっぱり隠したいのだ。

 朝日の政治記者の重鎮、曽我豪・編集委員(元政治部長)は2月14日付コラム欄「日曜に想う」で、「失望の高い壁 越えるには」と題し、野党政権樹立へこう指南している。

 「長持ちする政権像と政権公約を示さないと、失望の壁は高かろう。だいいち今それをやっておかない限り、政権交代論の再興はなく、来たる衆院選で橋頭堡を築くことさえ遠のくのではないか」

 曽我氏も安保・外交に触れず、もっぱら戦後政治の「政局」を論じている。社説もそうだったが(2月2日付「立憲党大会 政権の選択肢へ正念場」)、朝日が描く「長持ちする政権像と政権公約」には外交・安保策がすっぽり抜け落ちている。

◆朝日も共産と訣別を

 もとより朝日に外交・安保記事はある。28日付では「経済安保 米中のはざまで」と題する随時掲載シリーズを1面から2面へと展開し、「米中対立の荒波の中、日本はどう乗り越えていくのか」と問題提起している。同じことをなぜ野党に問えないのか。

 作家の佐藤優氏は立憲に共産との訣別(けつべつ)を迫っている(産経14日付「世界裏舞台」)。朝日にもそれが言える。共産票を頼った「野党政権」の下心が見え見えだから「失望の壁」は限りなく高いのだ。共産への忖度(そんたく)記事は真っ平ゴメンだ。こと野党政権は未来にもifがあってはなるまい。

(増 記代司)