昭和54年と、ずいぶん前のことだが、千葉県…


 昭和54年と、ずいぶん前のことだが、千葉県曽呂高田などで起きた大規模な地滑り滑動の災害取材で、房総半島を車で横断したことがある。その時、半島内陸部はずいぶん山が深く、森林が長く続いたことに驚かされたのを覚えている。

 その千葉県の山間部では今日、間伐の遅れや開発による森林消失、放置竹林の拡大、病害虫の広がりなどの問題を抱えている。戦後、建築用材として優れているスギやヒノキの造林を推し進めたが、後に手入れが滞ったものが少なくない。

 その事態に大いに関係しているのだが、山間の山武市では台風15号の影響で大量のスギが倒木。大規模停電を起こしただけでなく、道をふさぐなどして復旧を遅らせている。

 倒木の現場やその画像を専門家が調べたところ、幹の内部が空洞化する「溝腐病」という病気であることも確認された。木更津市や成田市、富津市の倒木も病気のスギの可能性があるという。

 わが国では森林の荒廃により山斜面の土の保水力が低下したため、豪雨の際には土石流や土砂崩れなどによる甚大な被害が全国各地で引き起こされている。しかし、倒木が原因でライフラインの障害がこれほど広範囲で起きた例はほとんどないのではないか。

 森林整備は、自然災害の防止、被害拡大抑止の最も重要で強力なファクターの一つ。森林荒廃が進めば今後、新手の自然災害も生みかねない。時間はかかるが、大局観を持って森林回復に尽くすべきだ。