北アルプスの三俣山荘から伊藤新道を通って…


 北アルプスの三俣山荘から伊藤新道を通って湯俣川を下り、湯俣温泉にテントを張って1泊したことがあった。1971年夏のことで、渓谷沿いの道はひどく荒れていて、その下流の高瀬川に沿った山道は消えていた。

 前年の台風で山の状況が大きく変化していたのだが、それを知らなかったのだ。当時工事中だった高瀬ダムは79年に完成したが、伊藤新道は83年以後使えなくなり、地図からも消えた。

 湯俣は河原を掘れば温泉が湧き出てくる面白い所。晴嵐荘という山小屋がある。昨年7月、集中豪雨で川が氾濫し、吊(つ)り橋が流出。休業の知らせが出されていたが、この8月3日、丸太橋を架けて営業再開したという。

 自然界は生きて動き続けているので、登ろうとするルートについて最新情報を知ることが大事だ。昔は山岳雑誌で過去に起きた事故について調べたり、手紙や電話で現地に問い合わせたりした。

 だが今は、情報技術の発達でそれが容易になった。長野県警はこのほど、登山者用専用コミュニティーサイトを運営する株式会社ヤマレコ(松本市)に、遭難の発生場所や県内主要登山道の注意点を提供する取り組みを始めた(小紙8月27日付)。

 提供しているのは、2017年に北アルプスや中央アルプス、八ケ岳などで発生した遭難で、サイトの地図上の発生場所をクリックすると日や天候、遭難者の性別や年代が表示される。計画を立てる上で活用し、事故防止に役立ててもらいたい。